アジサイの名所として知られる栃木県栃木市平井町の太平山県立自然公園「あじさい坂」周辺で4日以降、イノシシの目撃が相次いでいる。多くの見物客らでにぎわう20日も石段付近に姿を見せるなど、同日までの約2週間で計15件ほどの目撃情報が市に寄せられた。同所では30日まで「あじさいまつり」を開催中。市は捕獲対策を強化する一方、看板を設置するなどして観光客らに注意を呼びかけている。
あじさい坂は太平山神社に続く参道にある。約千段の石段両側に色とりどりのアジサイ約2500株が植えられ、現在見頃を迎えている。まつりの期間中は例年約6万人が訪れる。
市農林整備課によると、イノシシは坂の入り口付近や中腹で多く目撃されている。いずれも1頭で行動し、体長は1メートル弱。近くを人が通っても警戒する様子がなく、木々の茂みで餌を探したり、水路の水を飲んだりする行動をしている。
市は観光客らの写真を基に同一個体と推測。同課の担当者は「太平山の山中には昔からイノシシが生息しているが、人が多い場所で頻繁に目撃されたことはこれまでなかった」と話す。
市は地元猟友会と情報を共有。10日に坂周辺へ箱わな1台を増設し、計3台とした。鳥獣保護区の太平山では、市長の許可があれば猟銃を用いた駆除も可能だが、担当者は「日中は観光客が多いため使用すべきではない。くくりわなもイノシシが暴れて人へ危害が及ぶ可能性があるため、設置していない」という。
まつり期間中は市観光振興課職員が現地のまつり本部に常駐。目撃情報が寄せられた場合、栃木署と連携して周辺のパトロールを強化する方針だ。担当者は「本来、イノシシは臆病で人の姿を見ると逃げるが、その様子がない。見かけても刺激せず、市へ通報をお願いしたい」と話している。