浅野氏(右)と小川氏

 任期満了に伴う栃木県小山市長選は14日の告示まであと10日に迫った。再選を目指す現職浅野正富(あさのまさとみ)氏(67)と、新人の同市議小川亘(おがわわたる)氏(56)の2人が立候補を表明しており、一騎打ちの激しい選挙戦が予想される。いずれも政党からの推薦を受けず「無所属市民党」を掲げるが、支援態勢はそれぞれ立憲民主党系と自民党系に二分。次期衆院選栃木4区の前哨戦として、代理戦争の様相をみせている。

 6月21日、市内のホテルで開かれた小川氏の市長選立候補表明の記者会見。後列には市議15人ほどがずらりと顔をそろえた。市内の主要道路沿いには「小山を、前へ!」のキャッチフレーズとともに小川氏と市議の2連ポスター計17種類が並び、小川氏と県議とのぼり旗3種類も登場した。

 陣営関係者は「あくまでも市議たちの自発的な行動」と強調する。ただ、支援する市議17人と県議3人はいずれも自民系。これに公明党の議員団も加わる形となった。小川氏本人は市議会唯一の自民公認市議で、党派色は鮮明だ。

 市議会内の自民系会派は三つ。小川氏を含め7人が所属する「自民未来塾」は佐藤勉(さとうつとむ)衆院議員系とされる。このほか板橋一好(いたばしかずよし)県議系の「市政会」(6人)、白石資隆(しらいしとしたか)県議系の「おやま創生会」(4人)があり、これまで浅野氏への距離感も微妙に異なっていた。

 1月の浅野氏の再選出馬表明以降、板橋氏は「無投票でいいんじゃないか」と周囲に語り、浅野氏支持の姿勢をみせていた。これに対し佐藤氏は一貫して対立候補の擁立を求めていた。だが政治資金パーティーを巡る裏金問題で自民が逆風下にあるのに加え「現職の壁」が高いとみられ人選は難航。板橋氏ら県議を含め党小山市支部が結束し、小川氏擁立を正式決定したのは6月1日にずれ込んだ。

 一方の浅野氏陣営も、前回市長選から「個人的な立場」で支援する立民の藤岡隆雄(ふじおかたかお)衆院議員の存在感が際立つ。無所属の中屋大(なかやだい)県議や市議会派「市民派21」(4人)など、藤岡氏支持の枠組みで組織態勢が出来上がっているのが現状だ。

 衆院栃木4区で佐藤氏と対峙(たいじ)する藤岡氏は、2021年の前回衆院選で比例復活し初当選。小選挙区では惜敗率95・7%で及ばなかったが、市内に限ると4万票余りを獲得し、3万票余りの佐藤氏に大差をつけた。

 それだけに佐藤氏周辺にとっては「今回の市長選を足がかりに自民系市議がまとまれば、次期衆院選の支持固めにつながるとの期待がある。だが、負けると大きなダメージになりかねない」(自民関係者)。

 両陣営とも政党からの推薦は求めない方針だが、労組や業界団体からの推薦・支援態勢は複雑に絡み合う。市長選で党派色を出すことには功罪があるとされる中、両陣営がどのような戦略を描いて選挙戦本番に臨むのかが注目される。