「道路標識のポール部分に貼付されている緑色のシールの意味が知りたい」。下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」(あなとち)に宇都宮市、パート従業員女性(41)からこんな声が寄せられた。よく一緒に散歩に出かける小学4年生の娘(9)が、3年ほど前から「なぜシールがついているの?」と疑問を口にするようになったという。女性が投稿してくれた写真を見ると、確かに緑色の丸いシールが貼ってある。一体どんな意味があるのか、調べてみた。
身近な場所にもシールの付いた標識があるのではないかと考え、記者は7日までに、下野新聞社本社のある宇都宮市昭和1丁目付近を見て回った。半径約150メートル内に、直径約2センチの灰色のシールが、5本に1本ほどの割合で確認できた。
県警交通規制課によると、道路標識には五つの種類がある。目的地の方向などを示す「案内標識」と、車線数の減少など注意を促す「警戒標識」は、国や県など道路の管理者が設置する。
止まれといった禁止や規制などを知らせる「規制標識」と、横断歩道や優先道路などを知らせる「指示標識」の大半は公安委員会が管理している。一方、規制標識などの下に設置され、規制が適用される時間帯や曜日などを説明する「補助標識」は、種類によって管理者が異なるそうだ。
記者が確認した限り、シールが貼ってあるのは規制標識のみだった。しかし、シールの意味は「規制に関するものではない」(同課)ことが分かった。
では何を意味するのか。
「2014年に規制標識の調査を行った際に貼った記憶があります」。そう教えてくれたのは、道路標識の設置などを手がける交建(芳賀町祖母井)の常務荒井芳彦(あらいよしひこ)さん(55)。
当時、県警から受託され、交建など県安全施設業協同組合に加盟する業者が、県内全域の規制標識の安全性や可視性を調査したという。標識の設置年、柱の傾き、腐食程度、標識版の退色などについて1本ずつ調べた。その際、重複を避けるため、調査が済んだ標識に貼ったのがシールで、色の違いに意味はないという。
当時の記録は確認できなかったが、シールは規制標識の維持管理のために貼られた可能性が高いことが判明した。投稿してくれた女性に取材結果を伝えると、「事故などで曲がったりしない限り、標識は設置されたままだと思っていたので、調査が行われていたことに感心した。娘の疑問に答えることができてよかった」と話した。