浅野正富氏

 市議会で大多数を占める自民党系議員が擁立した対立候補でも、現職の浅野正富(あさのまさとみ)氏を破ることはできなかった。

 告示前から市内各所にポスターが乱立し、市を二分するかのような激しい選挙戦が予想された。だが実際には党派対立が透けて見え、市政への市民の関心を呼び込む機会にはならなかった。両陣営とも謙虚に受け止めるべきだろう。

 浅野氏が掲げる「市民との対話と連携」。その姿勢は多くの市民から一定の評価を受けた形となった。

 ただ、会議などに参加した市民からは「意見を聞いてはくれたが、実際に前進する兆しが見えない」といった声も聞かれる。浅野氏が得意とする脱炭素や生物多様性維持、有機農業といった分野で施策が進む半面、子育てや教育、文化面に関心を抱く市民からの不満はくすぶっている。

 新人の小川亘(おがわわたる)氏は「市民一人一人と膝を突き合わせて声を吸い上げる」との姿勢で、実際に対面した市民からは共感を得ただろう。だが丁寧な対応を試みる半面で、出遅れは致命的だった。中心市街地活性化の象徴として打ち出したコンベンションセンター構想などは、予算的裏付けも含め説得力に乏しかった。

 浅野氏と議会それぞれが自らの足元を見つめ直し、党利党略を超えた活発な議論が求められる。