鈴木さん(右)の自宅庭に咲いたクロチクの花=7月上旬、益子町大沢

鈴木さん方で咲いたクロチクの花=7月上旬、益子町大沢

人見さん方で咲いたクロチクの花=7月下旬、大田原市薄葉

鈴木さん(右)の自宅庭に咲いたクロチクの花=7月上旬、益子町大沢 鈴木さん方で咲いたクロチクの花=7月上旬、益子町大沢 人見さん方で咲いたクロチクの花=7月下旬、大田原市薄葉

 7月8日付本紙の「あなた発 とちぎ特命取材班(あなとち)全国の『パートナー紙』とともに」で、愛媛新聞社の「“120年に1度”の開花、報告次々 謎多い『クロチク』」の記事を掲載したところ、本県でも竹の一種クロチクが開花しているという情報があなとちに複数寄せられた。竹の花はめったに咲かないため、自宅で開花を目にした人からは「貴重な花が見られてうれしい」と喜びの声が上がっている。

 国立研究開発法人森林総合研究所によると、クロチクはイネ科マダケ属の一種で、ハチクの変種。樹木の幹に相当する稈(かん)は最初は緑色で、その後ツヤのある黒色に変化する。

 クロチクの花は、稲穂のように小さな花が集まった「花穂」が特徴。花びらはなく、雄しべが垂れ下がってくると、開花した状態となる。花は一斉に咲き、始めは緑色で、その後茶色に変化し、開花から1年以内に落ちるという。ただ、開花のメカニズムに関しては「研究途上で、実態はいまだ不明」と研究所の担当者は説明する。

 大田原市薄葉、人見修价(ひとみのぶよし)さん(83)、洋子(ようこ)さん(86)夫妻は5月ごろ、自宅の庭のクロチクが開花しているのに気づいた。雨の日に目をやると、「いつもより重たそうに垂れていて」、よく見ると稲穂のようなものが付いていたという。本紙を読み、開花は「120年に1度と聞いて驚いた」。

 人見さん夫妻がクロチクを植えたのは、自宅を構えた約50年前。毎年、七夕用のササとして近所に配ってきたが、花を咲かせるのは今回が初めて。生命力が強く、すぐに生い茂るため、近年は刈り取るのも大変だが、開花を確認した2人は「そう見られるものではない。良いことがあるかも」と笑顔を見せた。クロチクは現在も咲いている。

 益子町大沢、鈴木利雄(すずきとしお)さん(94)方では、4月ごろに一斉に開花し、タケノコを植え替えた鉢でも同時に咲いた。

 クロチクは自宅を購入した1960年当時から、庭にあったという。鈴木さんは「花が咲くことは本で知っていたが、まさか今年咲くとは。とても珍しいものが見られて良かった」と話した。7月に入り、花は枯れるように落ち始めた。

 研究所によると、開花情報は2010年代後半から全国で増加した。明治後期の1902~08年ごろに一斉開花があったことから、約120年の周期を迎えているとされる。

 開花後、稈は数年かけて枯れるというが、研究所は「地下茎が生きていれば、またタケノコを出して再生する」としている。

 鈴木さんは、茶色がかったクロチクの花を眺めながら「また春にタケノコが出てくるのか、これからまた違った楽しみがある」と待ち望む。