小山市で2004年9月に幼い兄弟が同居する男に暴力を受けた末、思川に投げ落とされ水死した虐待死事件は12日、発生20年の節目を迎えた。事件現場近くでは供養のため設置された地蔵に来訪者が祈りをささげ、ボランティアで周辺の清掃を続ける市民からは「子どもが安心できる社会になってほしい」と悲劇の再発防止を訴える声が聞かれた。
事件で犠牲となったのは同市内の小林一斗(こばやしかずと)ちゃん=当時(4)=と隼人(はやと)ちゃん=同(3)=兄弟。地蔵は事件後、匿名の人物によって現場近くの河川敷に設置され、その後、新間中橋南方の思川左岸の堤防上に移された。
12日は散歩途中に地蔵へ手を合わせる人の姿が見られたほか、線香や飲み物なども供えられた。同市横倉新田、無職篠崎安雄(しのざきやすお)さん(74)は節目を報じる同日付の本紙で2人の写真を目にし、数年ぶりに来訪。「生きていたら20歳過ぎか。なぜこんなひどいことができるのか。あまりにかわいそうだ」と声を震わせた。
事件後間もなくから地蔵の清掃を続ける同市西城南4丁目、元民生委員菅原清子(すがはらきよこ)さん(80)は20回目となる兄弟の命日を控えた8、9の両日、日の出前に現地を訪れては周囲の草刈りや花の入れ替えを行った。
事件の約3カ月後に現場近くで行われた思川桜の植樹活動に参加し、自ら植えた桜と兄弟の名前が付けられた桜が隣合ったことをきっかけに地蔵の清掃を始めた。それから約20年がたっても水やおもちゃを供える人が絶えず、事件に思いを寄せる人がいることに心強さを感じている。
近年は足腰が弱くなり12日の訪問は見送ったが、県外から社会福祉を学ぶ大学生らが訪れる22日は現地に赴く予定だ。菅原さんは「若い人たちにとっては昔の話になりつつある。足の動く間は現場に行って語り継いでいきたい」と決意を新たにした。