宇都宮市上下水道局が、水道水の広報に力を入れている。良質で安全な水に関心を持ってもらおうと、給水スポットの設置や浄水場でのヤシオマス養殖などユニークな活動を展開。背景にあるのは水道水離れへの危機感で、老朽化対策も並行する中、需要減が続けば料金の引き上げが視野に入ってくる。飲用需要拡大に向け、水道事業全般への一層の市民理解が必要だ。

 市の水道水は国際的なコンテストで金賞に輝くなど高く評価されている。近年は水道水のPRを強化しており、市中心部や市内3小学校に給水スポット「宮の泉」を設置した。水道水を詰めたペットボトル飲料や瓶詰めの炭酸水も販売している。

 今年1月からは白沢浄水場の水質監視池で、本県ブランド魚ヤシオマスの養殖に挑戦中だ。市名物のギョーザの味が水道水で変化するかという実験も行うなど、ユニークな情報発信に事欠かない。

 奇をてらった話題づくりのように見えるが、戦略的な広報活動の背景には深刻な水道水離れがある。市のアンケートによると、そのままの水道水を飲む割合は2017年度の70%から、22年度には52%と大幅に低下した。その一方で市販ペットボトルやウオーターサーバーの割合は6%から19%と約3倍に増えた。人口減少に加え市民意識の変化などが影響し、年間の使用水量は19年の5200万トンから23年は100万トン減少した。

 使用水量が漸減する中、20年代後半からは老朽化した水道管の敷設替えが本格化する。敷設替えにかかる費用は年間60億~70億円に上り、70年代にピークを迎える。

 税制改正を除く水道料金の引き上げは1997年以降、行われていない。水道事業は独立採算が原則で、敷設替えや耐震化などへの対応は水道料金で賄うことになる。市は現時点で料金を維持する考えだが、飲用需要減が大きく改善しなければ、近い将来の値上げは避けられない。

 水道水の使い道は飲用だけでなく、料理や入浴、トイレなど生活全般だ。市はデジタル技術などを駆使し効率化や経費削減も進めているが、巨額の固定費もかかり限界がある。市販品に比べ安価な水の供給を今後も続けるためには、市民に厳しい現状を伝え理解を促すことが不可欠だ。市民も当事者意識を持ち、飲用ニーズの拡大に協力したい。