旧ジャニーズ事務所の性加害に関する報道の問題点や課題を指摘した新谷氏

対談する坂本さん

旧ジャニーズ事務所の性加害に関する報道の問題点や課題を指摘した新谷氏 対談する坂本さん

 「週刊文春」元編集長の新谷学(しんたにまなぶ)氏(60)が3日、マスコミ倫理懇談会第66回全国大会で登壇し、旧ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川(きたがわ)氏(2019年死去)による性加害問題を踏まえ、報道側の問題点や課題を指摘した。メディアが報じなかった背景を「(同事務所と)仲良くしていた方が得をするから」と自戒を込めて話し、「お金や権力を持っている取材対象に対して起こっている問題だ」と議論する重要性を説いた。

 新谷氏は、司会の「週刊ポスト」元編集長坂本隆(さかもとたかし)氏と対談形式で話を進めた。

 性加害問題は週刊文春が1999年10月に報じた。2004年に裁判で喜多川氏の性加害が認定されたが、新聞やテレビでは大きく扱われず、後に「メディアの沈黙」と呼ばれた。

 新谷氏は、同事務所のタレントをテレビや雑誌に起用するとメディア側がもうかる構造だったと指摘し、「沈黙の答えはシンプルだ。もうからなくても報道し続けるのか、ということは(メディアに)突き付けられた課題だ」と強調した。

 メディアの沈黙はその後の被害拡大につながるとし、「もうかる、もうからないとは別次元で、そこを譲ってしまっては報道を名乗る資格はない」と訴えた。

 喜多川氏の行為を非難する一方、功罪を議論する「複眼的な視点は大切」とし、「良いと思っても書けない、だめだと思っても書けない状況は不健全だ」と報道側の姿勢をただした。

 数々のスクープを世に出した週刊文春。「社会的に意義はあっても(雑誌が)売れないスクープもある」と葛藤をのぞかせつつ、「現場の記者は志、正義感を持っている。(ネット社会になり)紙のビジネスは厳しい状況だが知恵を出し合いたい」と呼びかけた。(枛木澤良太)