将棋文化の振興を図る自治体やプロ棋士が集う県内初の「全国将棋サミット」が12日、大田原市で開かれる。多くの人が棋士や対局に触れ、自治体同士の交流を促進してほしい。市が掲げる「将棋によるまちづくり」のさらなる機運高揚の起点としたい。

 サミットは10回目。関東で開くのは第3回の東京都以来である。市内開催は、主催者の日本将棋連盟から声をかけられ決まった。市の取り組みが評価された結果だ。

 市が2004年度の市制施行70年を記念し誘致した王将戦は、19期連続で行われている。今年1月、当時の藤井聡太(ふじいそうた)八冠が第1局を制したことは記憶に新しい。継続的にレベルの高い将棋を身近に感じる機会に育った。

 王将戦が行われるようになったことを機に、市は小中学校の全学級に将棋盤と駒を配置した。王将戦と連携した「大田原将棋名人杯」や、棋士から指導対局を受ける「集い」も行う。先を読む知力や、礼節を身に付けることにつながっているだろう。

 当日は、連盟会長の羽生善治(はぶよしはる)九段らプロ棋士と大田原高出身のお笑いコンビU字工事のトークショーや、棋士同士による記念席上対局が催される。一般観覧者への大きな見せ場だ。棋士の素顔を知ったり、プロの読み筋をライブ感を持って感じたりし、将棋の裾野を広げたい。

 参加自治体は大田原市、本県を含め全国25。将棋駒の生産量日本一の山形県天童市、関西将棋会館が近くオープンする大阪府高槻市などが名を連ねる。取り組み発表や交流会を通じ切磋琢磨(せっさたくま)してほしい。

 「将棋のまち」としての大田原市は王将戦の実績を重ね、有名棋士の人気もあって盛り上がりを見せる一方、独自性は十分とは言えない。

 市が「将棋のまち」とは別に取り組む「歴史を生かしたまちづくり」に絡められないか。将棋にまつわる歴史を発掘し、活用することは一考の価値があるだろう。成果が蓄積されれば、市内にとどまらず県内への波及効果も期待できる。

 市は会場の那須野が原ハーモニーホールでプロモーション映像を流し、公共コンサートホールでは珍しいパイプオルガンの演奏も披露する。サミットに県内外から千人以上が訪れる見込みだ。魅力をアピールする好機としたい。