足利市議会の議会改革推進協議会は先月、議員定数を現在の24から3削減し21とすることを決めた。今後、議員定数の条例改正を行い、2027年春の市議選から適用する見通しだ。
市議会が定数削減に踏み切った背景には、政治への不信感の高まりや人口減に伴う財政状況の悪化がある。しかし、定数削減だけでは議会が直面する諸課題は解決しない。市民の信頼醸成に向け、議会改革を継続してほしい。
昨春投開票された市議選は立候補者が定数1オーバーにとどまったこともあり、投票率は過去最低の39・66%となった。選挙後の臨時議会で新人議員が怒号を張り上げるトラブルも発生した。テレビでもセンセーショナルに取り上げられ、市民から「市議なんていらない」といった厳しい声も挙がった。
ただし、足利市議会の定数が他市と比べて多いわけではない。市議1人当たりの人口(7月現在)で比較すると、足利は5791人で、県内14市の中では宇都宮市(定数45)の1万1386人と小山市(定数28)の5938人に次いで、「議員が少ない」市議会となっている。
議会内には削減への慎重論も根強く、一部市議からは「市民の多様な声が議会に届きにくくなる」「削減はポピュリズム的な受け狙い」といった反論もあった。
それでも削減を決めた理由について、削減派の市議は「選挙での競争原理を確保し、議員の質向上を図るためにも削減は避けて通れない。市民は物価高などで苦しんでおり、市議のみがお手盛りでは信頼を得られない」などと強調する。
市を取り巻く環境の変化も理由の一つ。昨年は人口が初めて14万人を割り込み、税収も減少傾向が続く。定数削減で議員報酬などは約1億円(4年間)が縮減されるため、財源確保にもつながる。
議員自らが「痛みを伴う改革」を断行した姿勢は率直に評価したい。だが、国政の「政治とカネ」問題も相まって、議員への不信感は払拭(ふっしょく)されていない。若者や女性など多様な人材が市議選に挑戦できる環境整備や、地方議会の役割を住民に十分理解してもらう努力を続けてほしい。さらに、政策立案や行政の監視など緊張感のある議会運営に専心すれば、政治離れを防げるはずだ。