日本フットボールリーグ(JFL)の栃木シティが今季、初優勝を果たし、来季のJ3昇格を決めた。リーグを圧倒したアグレッシブなサッカースタイルを貫き、ホームタウンの栃木市、連携協定を結ぶ足利市がある県南地域からJ3に旋風を巻き起こしてほしい。

 チームは1947年、実業団チームの日立栃木サッカー部として誕生。2018年に日本理化工業所(東京都品川区、大栗崇司(おおくりたかし)社長)がメインスポンサーに就き本格的にJリーグを目指し始めた。その後はいち早く選手のプロ化を進め、元Jリーガーなどの補強も積極的に行ってきた。

 関東1部リーグからJFLに復帰して1年目での快挙だ。チームの強み、魅力は何といっても攻撃的スタイルだろう。今季のチーム総得点はリーグ1位の66点で2位と14点差。得点王ランキングのベスト10にはリーグで唯一2人が名を連ねた。

 昇格すれば、厳しい戦いが続くことが想定される。守勢に回る試合も増えるだろう。それでもチームの魅力は捨てないでほしい。そのスタイルこそ2022年に就任した今矢直城(いまやなおき)監督を中心に追い求めてきた「わくわくさせるサッカー」にほかならない。初めてのJ3にどんな布陣で挑むのか、今冬の強化戦略にも注目したい。魅力的なサッカーを続ければ、新たなサポーター獲得にもつながるはずだ。

 チーム強化はもちろんだが、Jクラブはリーグが掲げる「地域に根差したスポーツクラブ」を目指さねばならない。すでに小学校でのサッカー教室、ホームスタジアムでの地元のスポーツ大会開催などに取り組んでいるが、地域貢献活動にはより力を入れてもらいたい。

 栃木シティはもう一つのホームタウンの壬生町を含め、県南に根差していくことを掲げている。活動を小山、佐野両市にも広げ、老若男女がクラブに親しむ機会を提供してほしい。チームの歴史は古いが、現チーム名になりまだ6年目。選手自ら地域に出る機会を増やし、地元サポーターに愛される顔の見えるクラブになることを期待したい。

 来季はくしくも、宇都宮市をホームタウンとする栃木SCもJ3に舞台を移す。初めて実現する「栃木ダービー」がJ3優勝争いの一戦になれば、本県サッカー界の底上げにもつながるはずだ。