全国的に書店が減っている。益子町内にも総合書店は1軒しかないが、里山の雰囲気にひかれ移住した人が絵本の魅力を伝えたり、個性あふれる古本店が営業したり、ひと味違った取り組みが地域に息づいている。「一冊」に込められたさまざまな思いを紹介する。
子どもに良い本との出会いを 家庭文庫「まーしこ・むーしか文庫」
「ながいながいペンギンの話」「北極のムーシカミーシカ」などの代表作で知られる児童文学作家いぬいとみこさんが、東京都練馬区で開いていた家庭文庫「ムーシカ文庫」を受け継ぐ場所がある。大沢の石川綾子(いしかわあやこ)さん(64)が自宅で開いている「まーしこ・むーしか文庫」だ。27年間にわたり絵本の貸し出しや読み聞かせ、素語りなどを通して地域の子どもたちに本の魅力を伝えている。

ムーシカ文庫から引き継いだ約2千冊をはじめ、自ら厳選した絵本や児童書など「どの本を手に取っても悪い本はない」という計約5千冊が13畳の1室にズラリと並ぶ。文庫は小学低学年以下の親子ら向けに月2回、第1、3土曜に開く。
取材時は4組の親子が利用。子どもはにぎやかに遊んだり、真剣な表情で本を探したり、石川さんの傍らで読み聞かせを楽しんだり。本との出会いや交流の場のみならず、親にとっても子育ての悩み相談ができる憩いの場になっていた。

17年ほど通っているという上大羽、製陶業西谷春子(にしたにはるこ)さん(47)は息子の益子小2年祥希(よしき)さん(7)と訪問。「子どもの興味や成長に合わせて本を薦めてくれるので、とてもありがたい」と話す。
石川さんは都内で幼少期を過ごした。本好きで当時世田谷区にあった家庭文庫に通い、児童文学者の石井桃子(いしいももこ)さんや松岡享子(まつおかきょうこ)さんらの素語りに親しんだ。
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