バスケチームを作らないか。そう奨吾(しょうご)が提案したのが三日前のこと。あれこれ調べてみると意外にも悪くないアイデアだとわかり、皆で協議しながら計画案を作成したのだ。こうして実際に市長に計画案を示したのは三度目だ。一度目のドラマ・映画のロケ地誘致と二度目の町全体リノベーション案はいとも簡単に却下されていた。
「ふむ。バスケか」
「はい、バスケです」
永川(ながかわ)は真剣な顔つきで資料を読んでいる。彼は奨吾と同じ東京の私立大学の卒業生で、市長就任以来、何かと目をかけてもらっている。現在の係長の地位にあるのも永川が裏で糸を引いた結果だと思われた。永川が就任する前、奨吾は役職なしの一課員だった。
「Bリーグというのは、何チームあるがよ?」
「ええと、Bリーグには二つのカテゴリーがありまして……」
奨吾は手元の資料を見ながら説明する。ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ、略称B.LEAGEは二〇一六年から始まった比較的歴史の浅いプロスポーツリーグだ。昭和期の企業チーム主体の時代を経て、二〇〇五年にプロリーグが発足し、その後は二つのリーグ(プロリーグと実業団主体のリーグ)が並立する状態が続いていた。FIBA(国際バスケットボール連盟)がこの状態に懸念を示したことから、紆余曲折(うよきょくせつ)の末、両リーグの統合と相成った。現在は一部に相当するB1リーグが二十四チーム、B2リーグが十四チームによって構成されている。
「その下にB3リーグというものがございまして、一定の条件を満たせばB2リーグに昇格できる仕組みになっています。目指すとすれば、まずはB3リーグに参加することでしょう」
「最短で何年でB2まで行けるがよ?」
「早くて来年秋からB3に参加、その翌年の秋から上のリーグに昇格する形が最短でしょう。詳しいことは調べていませんので、まだ何とも言えませんが」