NHK連続テレビ小説「あんぱん」が、3月31日に始まりました。主人公のモデルは「アンパンマン」を生んだ漫画家やなせたかしさんの妻、小松暢さん(役名は朝田のぶ)。その第1週に登場した「御免与(ごめんよ)駅」が、日光市(旧今市市)の東武日光線・旧下小代駅舎だと気付きましたか?。老朽化などに伴い取り壊される予定だったのが、地元住民により移設保存されました。住民の熱い心がなければ、のぶと父親らの思い出のシーンは違った場所で撮影されたことでしょう。駅舎保存のいきさつを、下野新聞の記事で振り返ります。
(以下、見出しの後の日付は紙面掲載日。市町村名など、記事の表現は原則として当時のままです)
保存か改築か、揺れ動く駅舎 今市の東武日光線下小代駅 資金確保などネック 歴史的価値理解するが…
(2004年05月16日)

昭和初期に建てられた東武日光線の下小代駅舎(今市市)が、保存をめぐり揺れている。小代地区出身の若者らが「地域の宝である駅舎を残そう」と「下小代駅舎を活かす会」(柴田智子代表)を結成。駅舎を所有する東武鉄道に改築の中止を申し入れるなど、保存に向けた活動を展開している。だが、地元自治会や市、東武鉄道は建物の歴史的価値を認めつつ、安全面や管理費用を捻出(ねんしゅつ)できないことなどを理由に保存に消極的だ。
東武日光線の下小代駅舎は、同線が開通した一九二九年に建設された木造平屋。七三年九月に無人化され、一日平均の利用客は二百二十人(二〇〇二年)。東武鉄道は、安全の問題などから無人駅舎の建て替えを進めており、同駅は昨年十二月に着工する予定だった。
小代出身で都内に住む会社員柴田智子さん(26)ら七人は改修方針を知り、昨年十二月「駅舎は文化的価値があり地域の宝。保存して地域の憩いのスペースとして活用すべきだ」と「下小代駅舎を活かす会」を結成。東武鉄道に工事の中止を要請した。
これに対し東武鉄道は(1)保存の要望が地域住民の総意であること(2)地元が保存費用を負担すること-などを条件に、保存に前向きな姿勢を見せ、工事を一時休止した。
これを受けて活かす会は、小代自治会の総会で住民に経緯を説明。駅舎保存への協力を求めたが、同自治会は「駅舎にそれなりの価値を認めるが、財政的負担は無理」と、自治会として保存活動を行わないことを決定した。
また活かす会は、市指定文化財の申請を目指したが、市は「古い物で保存したいという思いは分かるが、市文化財の指定基準に当てはまらない。町づくりに活用するにも、資金負担など地元自治会の協力が不可欠」と、市として支援の難しさを説明する。
費用面でめどが立たない現状に、東武鉄道は「今のところ活かす会と行政の話し合いの結果が出るまで工事は行わない。しかし、一年間もこのままというわけにいかない」と頭を悩ませる。
活かす会と地元自治会、市、東武鉄道のそれぞれが、七十年以上にわたり地域を見守ってきた駅舎の価値に一定の理解を示しているものの、肝心の保存・管理費用の負担をめぐり温度差がある。
柴田代表は「私たちの資金や寄付だけで費用の捻出は難しい」と、今後も市や東武鉄道へ協力を求めていく考えだが、駅舎保存は暗礁に乗り上げている。
下小代駅、文化財保存を 今市 建築家有志、大学教授ら東武鉄道と市に要望 築76年、往時の姿とどめる
(2005年11月26日)

【今市】東武日光線の下小代駅の保存活用に向けて、日本建築家協会栃木地域会に所属する建築家、大学教授ら十四人がこのほど東武鉄道、市に要望書を提出した。昭和初期に建てられた木造の小規模駅だが、「当時は標準的だった規格駅であるがゆえに、全国で姿を消しつつある」と指摘、東武側が登録文化財申請するよう求めている。
下小代駅は木造平屋の無人駅。東武日光線開通の一九二九年に完工、七十六年間を経過した。危険性などから東武鉄道は建て替える方針だったが、「当時をしのばせる文化的価値がある」として地元の若者らの「小代の会」(柴田智子代表)が保存運動を展開、工事をストップした状態だ。
要望書を提出したのは日本建築家協会栃木地域会の有志十四人(藤原宏史代表)。(1)木造(2)大きな改修がない(3)周辺環境が良好-などから「極めて希少。建築物はその場に立ち続けることで質の高い、由緒ある保存が可能になる。小さいながら掛け替えのない活用すべき存在」とし、市に対し、東武鉄道が登録文化財申請するよう働き掛けることを求めている。
有志の一人で、宇大工学部の小西敏正教授(建設学)の調査報告書は、同駅を「鉄道発達時代の規格にほぼ当てはまる駅」と位置付け、「特徴的な駅とは対照的に、どこにでもある、という気持ちが働き、いつの間にか解体されている当時の駅の一つ。創建の姿をとどめる存在は貴重」と指摘している。
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