長谷川雅紀(左)と渡辺隆=東京都品川区

 お笑いコンビ「錦鯉」が、5月6日の東京を皮切りに、独演会ツアー「バカの恩返し」を開催する。10カ所12公演に約6400人を動員予定で、今年もバカを前面に出した新作漫才を披露する。独演会にかける思いや生活の変化など、たっぷりと語ってもらった。

 【にしきごい】長谷川雅紀(はせがわ・まさのり、1971年生まれ、札幌市出身)と渡辺隆(わたなべ・たかし、78年生まれ、東京都出身)が2012年に結成。21年、M―1グランプリで史上最年長優勝を果たす。

(1)生のバカを見てほしい

▼記者 昨年よりも数が増えて新潟、福島は初開催。独演会への意気込みや楽しみ方を教えてください。

●長谷川 生の「こんにちは合戦」ですね。「こんにちは!」とあいさつしたら、お子さんだけでなく、まあまあ大人の方も「こんにちは!」って返してくれるんで。コミュニケーションというかコール&レスポンス的な、生でやり合えるっていうのがいいですね。

◆渡辺 単独ライブでは「作品を見てほしい」みたいな人もいると思うんですけど、僕らはやっぱり人間を見てほしい。本物のバカというものを生で。ライブを見てくれたら「本物は違いました」ってよく言われるもんね。

●長谷川 そうですね。ありがたいことです。

▼記者 お笑いでコール&レスポンスって、あまり聞かないワードですよね。

●長谷川 テレビだと音量が調節できるせいか、本当の「こんにちは!」は思ったより大きかったみたいなご意見を頂きます。普段みんなが使っている「こんにちは!」は偽物だよ。本当の「こんにちは!」はこれだと伝えていきます。

◆渡辺 コール&レスポンスをやる大人もいます。やっぱり本物には本物が寄ってくるのかなって思いますね。

▼記者 テレビでもネタを見ることができますが、ライブならではの魅力とはなんでしょう?

●長谷川 テレビだと4分とか5分と尺が決まっています。テレビでやったそのネタが独演会では17分ありましたもんね。その10分以上の間、2人で何をしゃべってたんだろうと思いましたね。

◆渡辺 独演会のネタはこちらも探り探りで、どこかで何回もやってきたネタではないから何が起こるか分からない。お客さんの前でやってみて、初めて面白いところに気付くことがあります。

●長谷川 面白かったから、その後の公演でやるようになるとかね。あと、やる場所によってもその土地ならではの面白さがあります。

◆渡辺 岡山では桃太郎のネタを丁寧に見られていた感じがするもんな。あんなバカなネタなのに。

●長谷川 変なことを言ったら怒られるんじゃないかって、ちょっと緊張感もありましたね。

▼記者 昨年の独演会では客席に「応援うちわ」がありましたね。

●長谷川 夢にも思わなかった。ただね普通、うちわのメッセージは「好きだよ」とかじゃないですか。われわれの場合は「長生きしてね」って書いてたんですよ。でも「愛してる」とか「抱きしめて」とか言われても困ってしまうので「長生きしてね」とか「野菜を食べてね」くらいがちょうどいいかもしれないですけどね。

(2)禁煙と20キロ増

▼記者 隆さんの禁煙が話題です。行き詰まると吸いたくなるとよく聞くんですけど、ネタ作りへの影響は?

◆渡辺 常に吸いたいので、日常生活全てに影響は出ている。ネタ作りだけではなく、常にイライラしている。吸った方が良いんじゃないか、というところまできてますね。

●長谷川 もう半年以上でしょ。禁煙したら飯がうまいとか、階段で息切れしなくなったとか言うじゃないですか。でも全然プラスの部分が見当たらないみたいなことを言ってるんです。だから口にくわえる物で、何とかストレス解消できたら良いかなと思うんですよね。木の枝とか。

◆渡辺 おしゃぶり昆布とかかと思ったら、木の枝って。イカれてるでしょ、さすがに。チンパンジーが蜂蜜を食うんじゃないんだから。

▼記者 舞台上で「芸能界からいなくなるよりも、この世からいなくなる方が恐ろしい」と実感がこもったことをおっしゃっていました。

●長谷川 僕も50歳過ぎて20キロ太りましたから。「50―20」って呼んでるんですけど、痩せなきゃなと思います。階段を使うようになったり、ラジオ体操をやってみたり。この世からいなくならないように頑張りたいと思いますね。

▼記者 20キロ太ると、何度か衣装を作り直したのでは?

●長谷川 体が大きくなる途中に衣装のチャックが壊れて、安全ピンで留めたことがありましたね。

◆渡辺 普通、生地の裏から留めるじゃないですか。でも表から行くから股間が銀色に光って、そのまま舞台に立とうとしたんですよ。

●長谷川 僕には作戦があったので、ネクタイでこうやって(前かがみになってネクタイを垂らし、股間を隠す)しゃべればいいかなと思ったんですよね。それからは少しずつサイズを大きくしていっています。

▼記者 太ってきてネタに影響は?

●長谷川 床に倒れる場面で起き上がるのが大変ですね。前は手を使わないで起き上がってたんですけど、今はグーで床を押さえて立ち上がるんですよ。「メイプル超合金」の安藤なつさんが、拳に「起き上がりタコ」ができると言ってて、何それと思ってたんですけど、まさか自分がやるようになるとは思わなくて。

(3)新婚生活スタート

▼記者 雅紀さんが正月に結婚を発表。いよいよ奥さまと同居を始めたとニュースになっていました。

●長谷川 こんなに怒られるんだっていう毎日ですね。風呂上がりのぬれたタオルを臭くなるから置きっぱなしにするなとか、夜に小腹がすいた時も食べるのはせめてチーズにしろって言われて。さらには二口で終わるチーズを、細かく食えって言うんですよ。

◆渡辺 奥さんが全部正しい。雅紀さんにはまっとうに生きてほしいですからね。どんどん怒ってほしいですね。

●長谷川 だけどいい面もあるんですよ。背中が乾燥しているのでクリームを塗ってもらうのとか、ありがたいですね。

▼記者 奥さんにしてあげたいことは何ですか?

●長谷川 地方に行くときにお土産を買ってくるっていうやつですね。料理とか片付けはあんまり得意じゃないけど、ゴミ捨てはできますよ。段ボールを捨てに行くのに4往復もしましたよ。

◆渡辺 4往復したとか、そういうことは言わないほうがいい。

●長谷川 僕はちょっと不器用でね、本棚とか棚も奥さんが作っちゃうんですよ。機械系も僕より得意で。そう言えばアレクサが家に来たんですよ。

◆渡辺 アレクサは奥さんには敬語だけど、雅紀さんにタメ口?

●長谷川 いやいや、まだちゃんとした会話はしてないですけどね。「ご機嫌な曲をかけてくれよ」って言ったら、かけてくれるんですよね。これから楽しみですね。

◆渡辺 友達ができたね。

●長谷川 あ、それで思い出しましたね。奥さんが「アレクサ、曲かけて」とか言って、その後に「雅紀、あれ持ってきて」って僕をアレクサ扱いしてましたよね。

◆渡辺 どっちが賢いんだろう。

●長谷川 負けるじゃないですか、僕。友達どころかライバルだった…。

(4)隆と朝ドラ

▼記者 隆さんは朝ドラ「おむすび」を半年間視聴し続けて、生活リズムの変化や達成感などありましたか?

◆渡辺 まず達成したっていう感じは特に無いんですよ。面白いから見てたっていう方が強かったんで。でも、本当に朝ドラってこんなに面白いのかっていうのを知りましたし、だとしたら、告知がちょっと足りてねえぞっていうのも感じましたね。また15分ってちょうど良いなって。15分にまとめるのが、すごい技術じゃないですかね。ヒロインがちゃんと歳をとって成長していく。半年間の使い方が本当にうまい。

▼記者 最初はギャルが入り口だったっていうことですよね。ギャルの魅力を教えてください。

◆渡辺 全力で自分の強みをこっちにぶつけてくる力って、ギャルが一番強いんじゃないですかね。表に出る人は全員覚えた方がいいのかな、という気がします。ノーガードで攻撃全振りみたいな。その点ってすごいんじゃないかな。まさに侍ですよね。

(5)50代へのアドバイス

▼記者 雅紀さんは50代になってもキャリアハイを更新する勢いです。中高年世代へのメッセージを。

●長谷川 50歳になった時は結構きましたね。まさか自分が半世紀も生きてるんだっていう、そっちのびっくり。でも僕がいろんなことを経験していなかったが故に、これから楽しいことがあるという面があるんです。ちょっと前に「グーニーズ」と「鉄道員(ぽっぽや)」を初めて見たんですよ。

◆渡辺 今は映画を見たくてしょうがないらしいんですよ。何かお薦めの映画ないですかね?

▼記者 僕は「トゥルーマン・ショー」が好きです。

◆渡辺 見てほしい。雅紀さんの見解を聞いてみたいな。まさにあなたの人生、トゥルーマン・ショーかもしれない。

●長谷川 そういう映画とかを見てないから、漫画も小説もドラマもっていう楽しみがあるんですよね。スポーツ系もやらない人間でしたけど、ゴルフ面白いよって言われたり、あとゲートボールも今からやれば、若手として活躍できるなと思ったり。50代、まだまだ楽しみはありますよ。食べ物にも興味がなくて、おなかをいっぱいにする道具だと思ってましたけど、おいしいものは本当においしいんだなって気付きました。道具って言い方もあれですけどね。

(6)チャーミングがザ・セカンドで活躍

▼記者 長年付き合いのある「チャーミング」が再結成して「ザ・セカンド」でベスト32に残りましたね。

◆渡辺 惜しかったんですよね。

●長谷川 ザ・セカンドに出る前にチャーミングじろうちゃんが、なんかの番組でちょっと炎上しませんでしたっけ?

※情報番組が大谷翔平ファンのヤバい素人としてじろうちゃんを仕込み、東京ドーム周辺のリポートをしていたアナウンサーにドッキリを仕掛けた。放送後、じろうちゃんは仕事をやりきった達成感に浸っていたが、番組は「あんな訳の分からないやつを出すな」などと炎上した。

◆渡辺 なんでじろうちゃんを仕込んだんだろうね。でも本格的に炎上する感じのやつではなさそうだけど。

▼記者 その炎上ネタをセカンドのツカミでやったら、誰も知らなかったらしいです。

●長谷川 ガハハハハ!

◆渡辺 ダハハハハ! ちゃんと負けるべくして負けたんだ。

 「バカの恩返し」公演日程は次の通り。▽5月6日ヒューリックホール東京▽24、25日北海道・共済ホール▽31日大阪府立男女共同参画・青少年センター▽6月7日岡山・おかやま未来ホール▽8日愛知・中電ホール▽22日新潟市民プラザ▽28日静岡・浜松市福祉交流センター▽7月12日福島・いわき芸術文化交流館アリオス▽20日福岡・電気ビルみらいホール▽26、27日東京・イイノホール

(取材・構成=共同通信 近藤誠、撮影=佐藤まりえ)