佐野市の運動公園の指定管理者選定を巡り、市議会の「調査特別委員会」(百条委)は、「金子裕(かねこゆたか)市長が特定の事業者に有利となるよう働きかけた」とする報告書をまとめ、3月中旬の市議会で可決した。さらに、金子市長が百条委の証人尋問で虚偽の証言をしたとして、検察に告発する緊急動議も提出され、賛成多数で可決した。市議会は同下旬、地方自治法違反容疑で宇都宮地検に告発している。
県内の現職首長が百条委で「疑義」を事実認定され、虚偽証言で告発されるのは極めて異例だろう。金子市長は4月の市長選で再選し、信任を得たとはいえ、引き続き行政のトップとして説明責任が求められている。
佐野市は4年前、市内の運動公園などの指定管理者に、企業2社からなる共同事業体を選定した。その後、このうちの1社の破産手続きが開始され、指定が取り消された。金子市長は県議時代にこの企業の関連会社から顧問料を受け取っていたため、市議会は両者の関係性に疑義があるとして、百条委で調査を進めてきた。
報告書で百条委は「公募を開始した後に新たな資格が設けられたことで競争性が妨げられた可能性があり、変更は市長の指示による」と認定。両者の関係性を「利害に伴う関係性があるという事実認定には至っていない」とする一方、「市長の権限により、特定の事業者が有利になるように職員に働きかけた」と結論づけた。
ただし、百条委が設置されたのは市長選を翌春に控えた昨年12月だったため、金子市長側から「百条委を政争の具にしている」との声が上がっていた。市長を厳しく追及した委員のうち2人はその後、市長選に出馬している。こういった経緯も相まって、市長選の関心が高まらなかった点は否めないだろう。
金子市長は再選後、議会対応について「今まで以上に丁寧に説明し、意見交換の場をつくっていく必要がある」と語った。反省すべきところは虚心坦懐(きょしんたんかい)に反省し、市民らが抱く疑問に誠実に答えることが肝要である。
今後は、市政の混乱を招く契機となった指定管理者制度を厳格に運用していかなければならないだろう。同様の疑念を生じさせぬよう、市執行部と市議会は透明性や実効性の確保にも取り組むべきだ。