通学バスに乗り込む奏明さん(右)と恵さん=4月、真岡市内

 493グラムの超低出生体重児として生まれ、小学校入学を先延ばしする「就学猶予」が許可されていた真岡市さくら2丁目、小林奏明(こばやしかなめ)さん(7)が今春、県益子特別支援学校に入学した。発達に遅れがあり、低出生体重児としては珍しい猶予が認められて2度目の年長生活を送った奏明さん。手指を使ったサインで周囲とコミュニケーションを図り始めるなど確かな成長を見せた。母恵(めぐみ)さんは「息子の成長に合った選択だった」と確信を深めている。

 1年生が中庭の芝生を楽しそうに駆け回っていた。5月上旬、県益子特別支援学校。クラスメートとほぼ同じ背丈の奏明さんも次々と遊具に挑戦していた。

 環境の変化が苦手で、入学直後は友達の様子を観察していた。「今では新しい集団に慣れ、自分で判断して動けるようになってきたんです」。荒井佳子(あらいよしこ)教頭(53)が目を細めた。

 奏明さんは2018年3月28日、予定より4カ月早く生まれた。2500グラム未満の低出生体重児の中でも特に小さい493グラム。持病があり、運動能力や知的能力に遅れがあった。保育園に入ると、同学年の園児と同じようにできないことが目立つようになった。

 「7月生まれの予定だったから、本当は1学年下の子。本人のペースに合わせれば幼児期をもっと楽しんで過ごせるかも」。胸を痛めた恵さんは真岡市教委に就学猶予を掛け合った。慎重な姿勢だった市教委も検討を重ね、猶予を認めた。

 昨年4月に年長生活を再スタートさせた奏明さん。発語はないままだが、理解できることが増え、手指のコミュニケーションサインで他の園児や保育者と交流を図り、活発に行動するようになった。

 恵さんも以前より「この子の育つスピードを受け入れられるようになった」。1年前は就学を遅らせることに反対の声もあった。最近は「奏明君、輝いてるね」と前向きな言葉をかけられることが増えた。

 運営する低出生体重児の当事者サークルには、就学猶予を検討する全国の保護者から相談が寄せられる。「同じ境遇の人の力になりたい。行政にももっと気軽に就学のことを相談できる窓口があれば」と望んだ。

 障害児の教育支援をしてきた姫路大の郷間英世(ごうまひでよ)学長は就学猶予について「学習面や交友関係づくりの視点から考えると、子どもが楽になるかもしれないが、同じ学年の子と過ごして学べることもある。個々の発達に合わせて柔軟に対応するといい」と指摘した。