初公開された松尾芭蕉の書簡に見入る来館者

 【大田原】前田の市黒羽芭蕉の館で31日、俳聖松尾芭蕉(まつおばしょう)が親しい門人に宛てた書簡の展示が始まった。所有する水戸市の男性から借り受けた物で、同館が確認したところ真筆と判明した一通。初公開で展示は8月31日まで。

 書簡は縦30・4センチ、横41センチで、掛け軸に表装されている。芭蕉が「おくのほそ道」の旅を終えた1690(元禄3)年正月17日付で、門人の万菊丸(まんぎくまる)に宛て。文末には「はせを」の署名が記されている。

 書簡では万菊丸の様子を尋ねたり自身の近況を報告したりしているほか、「初時雨猿も小蓑をほしげ也」など近作6句を伝えている。同館の新井敦史(あらいあつし)学芸員(58)は「有名な句が残っている点に加え、芭蕉が門人のことを気にかけている優しさや人間味が前面に出ているのが魅力の一つ」と見どころを解説する。

 夫婦で訪れた、さくら市早乙女、赤羽邦夫(あかばねくにお)さん(75)は「非常に達筆。300年以上も前の書簡が今も残っているのはすごい」と感心していた。

 午前9時~午後5時。月曜休館。入館料300円(小中学生100円)。(問)同館0287・54・4151。