政府が2026年度の創設を目指す防災庁について、福田富一(ふくだとみかず)知事が今月、本県への設置を求める要望書を内閣府に提出した。5月に県市長会から県が受けた要望を踏まえたもので、「本県は首都圏直下地震など大規模災害時のバックアップ拠点としてふさわしい」として、防災庁の本庁または地方分局を県内に設置するよう訴えている。

 防災庁の誘致を巡っては、知事の要望書提出時点で既に全国から18自治体・団体による要望が出されていた。誘致が実現すれば地方にとっては防災力の強化をはじめ、人材育成、産官学連携などさまざまな効果が期待できる。本県の動きはやや出遅れたものの、名乗りを上げたからには県と市町が一体となり防災力のさらなる底上げに取り組むべきだ。

 石破茂(いしばしげる)首相は多発する災害対応のための防災省創設を持論とし、防災庁はその前段と位置付けられる。6月の防災立国推進閣僚会議で示された組織概要によると、首相直属の専任大臣が置かれ、他省庁への勧告権を付与。各省庁には勧告を尊重する義務を負わせる。強い調整機能を持たせることで縦割り行政を排し、対策の不備を是正する狙いだ。地方分局については、首相が検討の加速を指示した。

 本県が提出した要望書ではまず、1999年の国会等移転審議会答申で、移転先として最高評価を得たことに触れた。「地震災害に対する安全性」「水害・土砂災害に対する安全性」などの項目で評価が高かったとし、災害が比較的少ない県であることを強調。東京圏との近接性や、東北・上信越方面へのアクセス性にも優れていることを挙げ「人や物資を円滑に輸送することが可能」とした。

 本県は地理的、環境的にも優位性が高い。国の防災体制が大きく変わろうとする今、より積極的にアピールすべきだ。

 全国各地で今年も豪雨などの自然災害が相次ぐ。防災や復興の対策拡充は急務であり、国と地方の連携は欠かせない。一方、防災庁の看板が高く掲げられるのに対し、地方分局を含め具体像はまだ固まっていない。まずは政府が地方分局の役割や規模、条件などを示す必要があるだろう。本県も誘致実現の可否にかかわらず地域防災力を高める好機と捉え、一層の取り組みを進めてほしい。