北の丸公園(東京都千代田区)の名称は、かつてここに江戸城北の丸があったことに由来する。明治以降、軍関係の施設が置かれたが、現在は森林公園として一般に公開され、広々とした敷地に見どころが点在する。最寄り駅の一つ、地下鉄東西線の竹橋駅から歩き始めることにした。
駅を出て西へ代官町通りを進み、園内へ入る。十字路に出て右側に見える白く大きい建物は「科学技術館」。外壁は宇宙に散在する星々をイメージしたデザインで、参加体験型の展示に力を入れているという。しばらく見ていると、親子連れが次々に館内に入っていった。
十字路を左折し、池の脇を回り込む。目指すは「旧近衛師団司令部庁舎」(重要文化財)だ。明治末期に建てられたゴシック風建築で、赤れんがの外壁が美しい。数年前まで東京国立近代美術館工芸館として利用されていた。内部は原則非公開だが、外観の鑑賞だけでも足を運ぶ価値がある。
池の周りの小道を北に向かい、細い水路に沿って歩くと小さい滝があった。木立に囲まれた岩々の間を水が流れ落ち、水しぶきが上がる光景に、つかの間の涼をとった。
園内で一番有名な建物は日本武道館だろう。武道の殿堂であるとともに、コンサート会場としても格が高い。1966年にはザ・ビートルズの来日公演もあった。この日はコンサートがあり、若い女性たちが思い思いのコスプレ姿で集まっていた。
武道館のすぐ近くに旧江戸城の遺構「田安門」(重要文化財)が立っている。二つの門を直角に配する「枡形門」で、正面に「高麗門」、その右側に「櫓門」が位置する。コンサート客とすれ違いながら門をくぐって園外に出ると、目の前に繁華な靖国通りが現れた。
【メモ】田安門を出て左側の「九段坂公園」には、明治初期に建造された擬洋風の高灯籠のほか、明治から大正にかけて活躍した陸軍軍人で政治家の大山巌らの像がある。