文集を手にする伊藤さん(左)と君島さん

 【那須】介護予防などを行う生きがいサロン「森のふくろう倶楽部(くらぶ)」を運営する高久丙、伊藤靖子(いとうやすこ)さん(62)は、戦争に関する高齢者の話を聞き書きした文集「僕たちの終戦記念日」を作成している。戦後80年を迎え、戦時を生きた人たちの記憶を残さなければとの思いから取り組み始め、これまでにサロン利用者ら12人分をまとめた。目標は100人で、将来的には書籍化して出版することを目指している。

 伊藤さんは東京都出身で、千葉県内で通所介護施設を運営していた際、利用者から戦争の記憶を聞く機会があったという。戦後70年となった10年前には、80~95歳の女性15人から聞き書きした文集「乙女たちの終戦記念日」をまとめた。

 当時、児童や女学生だった人が多く、伊藤さんは「少女たちの日々の暮らしの中での体験は貴重な記録になった」と振り返る。

 2021年に町に移住し、生きがいサロンを開設。高齢者と接し、これまでの人生などについて聞く中で、「戦争の記憶を話せる人がいなくなってしまう」との思いを強くしたという。戦後80年の節目に再び文集をまとめようと、今年4月から聞き書きを始めた。

 伊藤さんは8月15日の終戦の日を基点に、その前後の記憶を聞くことを意識しているという。これまでにまとめた12人は84~94歳で、町内のほか長野県や福井県など各地での当時の生活ぶりなどが記されている。

 表紙は広島市で平和を願う巨大木版画を手がけた高久乙、版画家君島龍輝(きみじまたつてる)さん(69)が担当。「メッセンジャー(那須高原)」という題名で、メッセージを届けるため雲のハトに運ばれる少女が描かれている。

 伊藤さんは「未来の子どもたちへのメッセージとして聞き書きを続けたい。戦争の記憶を話してくれる方がいれば、ご協力いただきたい」と話している。

 (問)伊藤さん090・4547・3133。