8日午前11時半ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の街頭演説をしていた自民党の安倍晋三元首相(67)が銃撃された。安倍氏は血を流して倒れ、救急搬送されたが死亡が確認された。奈良県警は殺人未遂の疑いで、現場で取り押さえられた元海上自衛隊員の職業不詳山上徹也(やまがみ・てつや)容疑者(41)=奈良市大宮町3丁目=を現行犯逮捕した。銃も押収した。

 1932年に海軍の青年将校らが犬養毅首相を殺害した五・一五事件など大物政治家に対する暗殺は戦前には相次いだが、戦後では首相経験者が殺害された例はない。岸田文雄首相は「民主主義の根幹である選挙が行われている中で起きた卑劣な蛮行であり、決して許すことはできない」と厳しく非難。戦後日本史に影を落とす重大事件となった。

 安倍氏は母方の祖父が岸信介元首相、父方の祖父が安倍寛元衆院議員、父は安倍晋太郎元外相という政治家一家に育ち、93年衆院選で故晋太郎氏の後を継いで初当選した。2006年9月に当選5回、52歳の若さで第90代首相に就任。戦後最年少、初の戦後生まれの宰相となった。

 健康状態の悪化に伴い07年9月、辞任したが、12年12月の衆院選で政権奪還を果たし、首相に再登板。歴代最長政権を担った。


【電子号外】安倍元首相死亡(2022年7月8日)