「那須与一の謎を解く」

「那須与一の謎を解く」

野中哲照教授

「那須与一の謎を解く」 「那須与一の謎を解く」 野中哲照教授

 県民にとって親しみのある歴史上のヒーローと言えば、那須与一(なすのよいち)はその代表格だろう。平家物語の「扇の的」は古文の授業で学び、大田原市の道の駅はその名も「那須与一の郷」で馬に乗った与一像がある。ただ昔から「『扇の的』は史実なのか」「そもそも与一は実在したのか」という見方がある。そこに一石を投じたのが野中哲照(のなかてっしょう)国学院大教授(日本中世文学)の著書「那須与一の謎を解く」だ。知っていそうで実は知らない与一に迫る興味深い一冊だ。

 本書は2部構成で、1部は「扇の的」の読み方を解説する。与一が射落とし源氏、平氏ともに拍手喝采する場面に目を奪われがちだが、「平家物語の中でもよく練られている話。読んで訳すだけではもったいない」(野中教授)。