アマゾントチカガミ。小さな葉の裏には浮袋がある=11日午前、宇都宮市
アマゾントチカガミ。小さな葉の裏には浮袋がある=11日午前、宇都宮市

 水路を覆い尽くすように、緑の植物が広がる-。宇都宮市の水路で見つかった植物の正体は、水槽用や観賞用としても広く流通している外来水草の「アマゾントチカガミ」だ。南米原産で繁殖力が強く、広がれば生態系に影響し、農業被害を引き起こす懸念もある。

 栃木県内では同市瓦谷町の水路で初めて確認され、11日には県が駆除活動を実施。市民ボランティア34人も参加して、作業が行われた。

水路に入り、アマゾントチカガミを手で取り除く参加者たち=11日午前、宇都宮市
水路に入り、アマゾントチカガミを手で取り除く参加者たち=11日午前、宇都宮市
アマゾントチカガミの除去作業に取り組む参加者たち=11日午前、宇都宮市
アマゾントチカガミの除去作業に取り組む参加者たち=11日午前、宇都宮市

 「こんなに広範囲に広がっているとは…」。午前9時、胴長に着替えた参加者たちが水路を見渡し、驚きの声を漏らした。幅2メートル、約400メートルにわたり、水面にアマゾントチカガミが繁茂していた。

 この日は200メートル区間で駆除を実施。水路に入った参加者たちは黙々と手や網で水草をかき集め、袋に入れていった。「水で重くなっているので見た目以上に重労働です」と、参加者の男性は汗をぬぐった。

 約2時間後、覆われていた水面があらわになり、見違える光景に。「緑のじゅうたんが、やっと水路になった」と感嘆の声も。宇都宮市在住の会社員、吉田浩昭(よしだひろあき)さん(37)は「環境保全に協力できて良かった」と晴れやかな表情を見せた。

駆除したアマゾントチカガミを詰めたフレコンバッグを引き上げるトラック=11日午前、宇都宮市
駆除したアマゾントチカガミを詰めたフレコンバッグを引き上げるトラック=11日午前、宇都宮市

 その後も県職員が水中に残った根や葉を取り除き、フレコンバッグ25個分のアマゾントチカガミを回収。クレーンで水路から引き上げた。県自然環境課の担当者は「初めての試みだったが、たくさんの方の協力のおかげで予想以上にきれいにできた」と話した。

 アマゾントチカガミの繁殖場所の近くには、国の準絶滅危惧種の水草・ナガエミクリが生育している。県立博物館の星直斗(ほしなおと)自然課長は「アマゾントチカガミの繁殖を食い止めなければ、ナガエミクリが追いやられてしまう可能性がある」と指摘した。

アマゾントチカガミが繁茂した水路の近くに生育する希少な水草「ナガエミクリ」の花=11日午前、宇都宮市
アマゾントチカガミが繁茂した水路の近くに生育する希少な水草「ナガエミクリ」の花=11日午前、宇都宮市

 県は年度内に残りの区間でも駆除活動を行う予定。一度に完全に取り去ることは難しいため、来年度も監視と駆除活動を続ける方針という。