第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」(障スポ)が、29日に開幕する。台風やコロナ禍による延期、中止を経て4年ぶりの開催となる障スポには、多様な背景のある本県選手が出場する。積み重ねた努力や大舞台に懸ける意気込みを伝える。
「自分を育ててくれたバレーにうそはつけない」。バレーボール男子(聴覚)の主将若原正享(わかはらまさゆき)(39)=宇都宮市=は繰り返す。常に全力を尽くす誓いでもある。
名古屋市出身。1歳で補聴器を付けた。小学4年から普通学校で競技に打ち込み、高校では全国総体(インターハイ)にも出場した。
視覚、聴覚障害者が学ぶ筑波技術短大(現・筑波技術大)入学後、聴覚障害者の「デフバレーボール」を始めた。2008年世界選手権では、日本代表の主将としてプレーし、銅メダルに輝いた。県庁職員として勤務しながら、聴覚障害者の五輪「デフリンピック」でも活躍した。
「競技を通して多くの人と出会い、経験を積み重ねて人間的にも成長できた」
若手選手発掘が難しい中、初心者も含めたメンバーで練習を重ね、ここまで来た。時に仲間に厳しく接するのは、障スポに挑む真剣さの裏返しだ。
試合中、補聴器は使えない。ボールを我慢強くつなげる持ち味を発揮するには、アイコンタクトや身振り手振りによる選手同士のコミュニケーションが肝となる。
「全員でベストパフォーマンスをしたい」。思いをつなぎ、メダルを狙う。