第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」(障スポ)では、聴覚障害者の選手や観客の支援のため、575人のボランティアがアナウンスの文字おこしや手話などの「情報支援スタッフ」として携わる。開幕直前まで、競技会場で観客らに示す紙の準備などに励んできた。スタッフらは聴覚障害の理解促進のほか「支援者の輪が広がるきっかけになってほしい」と期待を込め、正確な情報を届けようと力を注ぐ。
26日午前、宇都宮市若草1丁目のとちぎ福祉プラザ。会話や音声を紙に書いて選手や観客に見せる「筆談・要約筆記(手書き)」のスタッフ5人が、競技当日の準備を進めていた。
陸上競技場で流れるアナウンスや選手名を、大きな文字でA3サイズの紙に書き出す。競技当日は選手や観客席の聴覚障害者に紙を次々と見せ、進行や順位などを伝える役割を担う。
「必要なのは2千枚以上です」。スタッフの1人で宇都宮市、主婦安田房代(やすだふさよ)さん(68)はこう明かす。2017年の愛媛大会にボランティアとして参加した。「4年ぶりの開催はうれしいですよね」。はにかみながらペンを動かした。
障スポの開催計画では、聴覚障害者への情報提供を保障するために、筆談や手話など専門的な知識を備えた情報支援スタッフの配置を定めている。
県によると、「筆談・要約筆記(手書き)」に112人、選手に帯同しサポートしたり観客の質問に答えたりする「手話」に421人が登録。会場アナウンスや競技順位などをパソコンで入力し、選手席近くのモニターなどに文字データを出力する「要約筆記(パソコン)」に42人が携わる。
フライングディスク競技で手話スタッフを務める栃木市、主婦狐塚良子(きつねづかりょうこ)さん(72)は手話歴40年のベテランだ。「障害にかかわらず、人として対等に言葉を届けるのが自分の役目」と気を引き締める。
宇都宮市、主婦折橋優子(おりはしゆうこ)さん(60)は、バレーボール競技の「要約筆記(パソコン)」のスタッフだ。10年以上の経験があり、「要約筆記の支援自体、まだまだ周知が足りない」と話す。「この経験を機に支援活動を続ける人が少しでも増えてほしい」。期待を胸に本番を迎えるつもりだ。