「うそだろ」。同僚記者からの電話に思わず声を上げた。1月上旬の週末。3日連続、3件目の殺人事件発生の連絡だった。
知人を暴行死させたとする日光市の事件。壬生町では母親刺殺容疑で長男が逮捕された。3件目はさくら市。兄が妹の首を絞め殺害したとされる事件だった。
「(妹の言動に)カッとなって取っ組み合いとなり、首を絞めてしまった」。容疑者となった兄の供述。現場記者たちの取材で背景が次第に浮かび上がった。
統合失調症を患った妹と長年支えた兄。暴れるなどの妹の不安定な行動と、募る兄の不安-。そうした内実を訴える親族もいた。「できることはなかったか」と戸惑う福祉関係者も。
家族の内情は見えにくい。看病や介護、育児-。多くの人が悩みや課題を抱える。自身、仕事と3人の子育てを不器用にこなす毎日。事情は違えど事件は人ごとと思えなかった。
刑事責任は法廷で追及される。それとは別に社会が共有し改善できることはないか。記事で問い、考えたい。「次の事件」を起こさないために。