初回は「性差とリーダー」について、アンケートを通して考える。
ジェンダーギャップが指摘される代表的な項目の一つが、政財界や地域などで活躍する「リーダー」。なぜ女性リーダーが相対的に少ないのか。
性別によるアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)との関連を探ろうと、アンケートを行った。利用したのは、宇都宮大男女共同参画推進室の川面充子特任助教(56)が作成したチェックリスト。33のキーワードについて、無作為に選んだ県内の60人(男女各30人)に印象を答えてもらった。
その結果、多くの人が「男性らしい」「女性らしい」と思うキーワードが浮かび上がった。回答者の6割以上が「野心的」「キャリア志向」などを男性らしい、「子どもへの関心がある」「気遣いが上手」を女性らしいと回答。回答者の性別による回答傾向に大きな差異はなく、こうした印象が根強く持たれていることがうかがえる。
一方、ユニークな結果が出たのは、同じ33のキーワードについて「リーダーに必要かどうか」を聞いたアンケート。川面助教によると、従来の調査では「野心的」「競争的」など「男性らしい」とされる印象が強い項目が上位を占めていたが、今回のアンケートでは「責任感がある」「困っている人への思いやりがある」「手助けを惜しまない」「友好的」などが並んだ。
変わりつつある理想のリーダー像。性別にとらわれることなく、選び、選ばれる社会が少し近づいてきたのかもしれない。
宇都宮大・川面充子特任助教に聞く
今回のアンケート結果は、リーダーに求められるものが変わってきたことを示唆する、非常に興味深いものだった。
驚いたのは、回答者の9割以上が「困っている人への思いやりがある」「よい聞き役である」などをリーダーに必要だと答えたこと。これらは「女性らしい」という印象が優位となった項目で、「男性らしい」項目一辺倒だった過去の調査とは異なる新しい傾向だ。従来のような支配型のリーダーではなく、協調的なリーダーが必要とされていることが分かる。女性活躍を後押しするような、期待が持てる結果だった。
一方、ジェンダーバイアス(性別に基づく偏見)の懸念は拭えない。「男性らしい」と「女性らしい」の差が最も大きかった「子育てに関心がある」は回答者の性別による回答傾向に差異がなく、男女ともに「子育ては女性」という意識が強い。女性の社会進出を難しくするだけでなく、育児をしたい男性にとっても育休を取得する際などに不利に働くかもしれない。
だからといって、ジェンダーバイアスを全て取り除くというのは現実的に難しい。大事なのは、ジェンダーバイアスに気付くこと。個人個人が少しでも意識を変えることで、誰もが生活や仕事をしやすい環境が実現するかもしれない。