展覧会を開催中の宮内さん。左の作品は「晩秋の歓び」

 【鹿沼】日本板画院委員の木版画家宮内達夫(みやうちたつお)さん(80)=下野市在住=の版画活動の集大成となる展覧会「栃木ゆかりの版画家 宮内達夫展」が、睦町の川上澄生美術館1階展示ホールで開かれている。80歳を区切りに、約半世紀に及ぶ創作活動からの引退を決意した。奥日光の戦場ケ原を描いた作品など21点を展示している。6月18日まで。

 宮内さんはエンジニアとして自動車メーカーに勤める傍ら、1971年から毎年、年賀状を木版で制作。退職とともに趣味を本格化させ、宇都宮市や都内などで計20回、個展を開いた。木版画界の巨匠棟方志功(むなかたしこう)が創設した日本板画院主催の「日本板画院展」で複数回受賞し、現在は委員を務めている。

 引退は、体力の衰えを感じて決断した。埼玉県加須市で2022年に開いた個展を最後とする予定だったが、同美術館からオファーがあったため今回を最後の展覧会とすることにした。

 多色刷りの木版画を専門に、風景画のような豊かな階調で光や色を描いてきた。名所・名跡を避け、奥日光を流れる川面や通勤途中で見かけた朝焼けの中の筑波山など、身近なテーマを中心に選ぶのが特徴だ。

 戦場ケ原のカラマツ林をテーマにした「晩秋の歓(よろこ)び」(15年)では、陽光を浴びて輝く紅葉と薄暗い樹林とのコントラストが鮮やかに描かれている。添えられた詩には「桜のような花はないけど」「落葉松(カラマツ)は全身で四季を謳(うた)う」と、自身の老いも楽しむ思考が表現されている。

 宮内さんは今後、「学生時代に熱中した水彩画やパステル画を趣味としたい」と話す。

 午前9時~午後5時。入館無料。月曜休館。

 (問)同美術館0289・62・8272。