2030年までに公共交通の脱炭素化を目指す宇都宮市。その一角を担うのがLRTだ。電力は、一般ごみの燃焼によるバイオマス発電や家庭用太陽光発電で作られる再生可能エネルギーを使用する。二酸化炭素(CO₂)を排出しないLRTを地域由来の再生可能エネルギーだけで走らせるのは、「世界でも類を見ない取り組み」(市環境創造課)という。

 市はLRTの年間使用電力を、運行や車両基地、停留場などで約4200メガワット時と試算する。その電力を供給するのは、地域新電力会社「宇都宮ライトパワー」。市が51%、NTTアノードエナジーや東京ガスなど民間企業や銀行が計49%を出資し、21年に設立した。

 ライトパワーの主な電力調達先は、市内のごみ処理施設「クリーンパーク茂原」。家庭ごみから年間1万3千メガワット時の規模でバイオマス発電を行う。家庭用太陽光発電の買い取りも進め、これら再生可能エネルギーをLRTに供給する。

 LRTの運行に伴う再生可能エネルギーの活用と自動車からの乗り換えで、年間約9千トンのCO2削減効果を見込む。市は今後、路線バスや地域内交通、民間タクシーも対象とした電動車導入支援制度を年度内に設けるなど、公共交通全体の脱炭素化を後押していく。

 電力の地産地消の要となるLRTは「乗るだけで脱炭素化に貢献する」(同課)。開業を弾みに公共交通や地域の脱炭素化を推進できるのか、環境分野でも関心を集めている。