客からプレゼントされた写真パネルを手にする池森社長

イケモリストアーの店内

客からプレゼントされた写真パネルを手にする池森社長 イケモリストアーの店内

 【足利】約60年にわたって地域の食卓を支えた朝倉町のスーパー「イケモリストアー」が、31日の営業を最後に閉店する。大型スーパーの相次ぐ進出に加え、物価高騰などが影響した。ドラマや映画のロケ地としても使われ、「聖地巡礼」で訪れる人も多かった同店。周辺住民からは「閉店しないでほしい」と惜しむ声が上がっている。

◇ほかにもWeb写真館に写真

 同店の前身は、池森康行(いけもりやすゆき)社長(64)の亡き母親アヤ子(こ)さんが1963年12月にオープンさせた。当初は青果が中心だったが、客の要望に応じて商品を増やし、67年には現在の店名となった。

 団地開発による人口増など近隣の発展とともに、売り上げも増加した。バブル景気の1980年代後半は「とにかく忙しく、無我夢中で働いた」(池森社長)。

 手作りで手頃な価格の総菜がそろい、懐かしさを感じさせる雰囲気が漂う店内。メンチコロッケが人気で、特売日の火曜にはすぐ売れるという。高齢者を中心に、徒歩や自転車で訪れる客が目立つ。

 ドラマや映画の人気のロケ地だった。俳優の山田孝之(やまだたかゆき)さんや中村倫也(なかむらともや)さんらが出演したドラマ「REPLAY&DESTROY」の撮影時は、見物客が店舗周辺に押し寄せたという。

 だが、最近は近隣に大型スーパーやドラッグストアが相次いで出店した。品ぞろえの豊富さや大手の競争力を前に苦戦した。物価高騰や光熱費の負担増、最低賃金の上昇などが追い打ちをかけ、経営継続が厳しくなった。池森さんは「4、5年前から閉店を考えていた。期待に応えられず心苦しいが、これ以上は無理」と苦渋の表情を浮かべる。

 5月に閉店の張り紙をすると、「残念だ」「やめないで」といった声が寄せられた。客から「楽しい買い物の思い出ありがとう」と書かれたイラストや写真パネルなどをプレゼントされた。

 閉店まで1週間を切った。西新井町、主婦女性(80)は「果物が新鮮で、お総菜がおいしい。残念ですが、時代の流れなんですかね」と惜しんだ。日曜定休。