黄色と黒の車両が速度を落とし、滑らかに停車する。8月26日に開通した次世代型路面電車(LRT)の宇都宮芳賀ライトレール線。終点の芳賀・高根沢工業団地停留場には連日多くの鉄道ファンらが訪れる。
芳賀町芳賀台と下高根沢には、芳賀と芳賀・高根沢の二つの工業団地がある。立地企業数は約100社に上り、町人口の1・8倍となる約2万7千人が勤務する。二つの工業団地で町の税収の約6割を占める。
町工業団地連絡協議会創立30周年記念誌などによると、町内で工業団地の計画が動き出したのは1970年。その後、71年は芳賀工業団地(248ヘクタール)、73年は芳賀・高根沢工業団地(226ヘクタール)の用地買収に着手した。
芳賀・高根沢工業団地はホンダの進出が決まった一方、芳賀工業団地は工場排水を巡って地元住民らの反対運動が起きた。芳賀西部台地土地区画整理事業の担当者として工業団地造成事業に携わった元町助役小林忠明(こばやしただあき)さん(76)は「公害が社会問題となり、敏感になっていた時期だった」と振り返る。
排水問題は計画開始から20年近くがたった88年、厳しい基準を設けた条例を制定し、前進した。分譲を開始すると、好景気も相まって続々と企業が進出した。小林さんは「芳賀が豊かな町と言われるようになったのは工業団地の成功によるもの」と強調する。
2022年には芳賀・高根沢工業団地南側に、県企業局が造成した22・7ヘクタールの芳賀第2工業団地が完成した。すでに完売し、5社の進出が決まっている。これからも工業団地は町の“大黒柱”であり続ける。