「男らしい」「女らしい」といったジェンダーバイアス(性別に基づく固定観念)は、社会の不平等や生きづらさにつながる恐れがある。こうした意識はいつごろ、どのように身に付くのだろうか。手がかりを探ろうと、下野新聞社は保育園を訪ね、さまざまな遊びを通して園児たちのジェンダー観をリサーチしてみた。初回は「好きな色選び」の結果を報告する。
協力してくれたのは、日光市芹沼の芹沼保育園。年中児27人(男14人、女13人)に参加してもらった。リサーチ方法については、足利短期大こども学科の林恵(はやしめぐみ)教授のアドバイスを受けた。
色選びで用意したのは、黄色、ピンク、青のボール。園児たちが持つ色のイメージで選んでもらおうと、実物を見せずに「ボールをプレゼントします。黄色、ピンク、青、どれがいいですか」と呼びかけた。
結果は、黄色が2人(男のみ)、ピンクが14人(男3人、女11人)、青が11人(男9人、女2人)。男児の大半が青、女児の大半がピンクを選んだ。
理由を聞いてみると、青を選んだ男児からは「かっこいいから」、ピンクを選んだ女児からは「かわいいから」との回答が多数。中には「男の子っぽい色だから」「女の子っぽい色だから」という理由もあった。
学研教育総合研究所が4~6歳の計1200人(男女600人ずつ)を対象に行ったインターネット調査「幼児白書Web版」(2019年)でも、各年齢で好きな色の1位は男児が青、女児はピンクだった。
林教授によると、自分の性を自覚するのは3歳ぐらいから。4歳相当の年中児を対象とした今回の結果からは、性別によって選ぶ色に偏りがある傾向がうかがえた。
美術教育と性の多様性について研究する同学科の茂木克浩(もぎかつひろ)講師は「好む色の違いは、生まれた性による先天的な要素もあるとされている」としつつ、「保護者やアニメといった外部の影響による後天的な要素も大きく、複雑に絡み合っている」と指摘する。
実際、今回も少数派ではあるがピンクを選んだ男児、青を選んだ女児もいた。「かわいくて、かっこいい」として青を選んだ女児は、青系のドレス姿が印象的なディズニー映画「アナと雪の女王」の主人公エルサが好きだという。
「『青はかっこいいから男』『ピンクはかわいいから女』となってしまうと、そうでない選択肢を持つ子にとっては生きづらさが生まれる」と茂木講師。林教授とともに「色に限らず、好きなものを好きだと言えること。またその環境があることが重要」と力を込める。「そのためには、親や保育者などの大人がそうした感覚から自由になる必要がある」