市貝町を支える屋台骨、それが赤羽工業団地の企業群だ。立地企業から町に納められる町税は現在でも全体の約30%を占め、雇用の場としても町の暮らしの礎となっている。
広さは約32・4ヘクタール。大手消費財化学メーカーの「花王」、「タキロンシーアイ」「クボタケミックス」「昭和化学工業」の4社が操業している。
「農村地域工業導入促進法」に基づく県内第1号の拠点地区となり、県開発公社の事業として1972年3月までに用地買収を完了。翌年にかけ造成された。
町史によると、72年にまず「シーアイ化成」(現・タキロンシーアイ)の進出が決定し、翌年「花王石鹸(せっけん)」(現・花王)の進出が決まった。進出企業第1号のシーアイ化成栃木工場が操業を開始したのは73年4月、花王石鹸は翌74年3月だ。2020年の統計では、4社で約1700人の従業員が働いている。
造成当時は県内で小山市、宇都宮市などで首都圏から多くの工場誘致に成功。真岡市の工業団地でも次々に工場が操業し芳賀地域の工業の中核となっていた。町制施行(1972年1月)前の村でも過疎化を危惧する村民の声を反映し、64年に条例を制定して工業団地建設に乗り出していた。
往時を知る現職町職員はいないが「当時の関本進(せきもとすすむ)町長が自ら自分の車を走らせ用地交渉に当たった」と先輩職員から伝わっている。
昨年度の町税収入は20億5千万円余り。過去には花王を筆頭に町税の半分を占めたこともある。軽部修(かるべおさむ)税務課長は「自ら懸命に動いてくれた町長がいたから今の町があるのかもしれない」と振り返った。