栃木市万町の篠崎節子(しのざきせつこ)さん(80)がこのほど、自宅に「子どもも大人も食堂ふらここ」を開設した。夫勝利(かつとし)さん(78)と東京・赤坂で日本料理店を50年営んだ篠崎さん。テナントビル取り壊しのために店を閉め、故郷に戻って念願の子ども食堂を始めた。「この街でも食の喜びや出会う幸せを分かち合いたい」と意気込んでいる。
万町で生まれ育った節子さんは高校卒業後、都内の専門学校などで料理を学んだ。広島県で板前の修業を積んだ勝利さんと結婚し、1973年に赤坂で広島料理店「小松(こまつ)」を開いた。
店は瀬戸内の海の幸と2人の温かい空気感が評判で、サラリーマンや官僚らに愛された。節子さんは「どんな方でも役職では呼ばず、1人のお客さまとして接した。多くのお客さまに育ててもらった店だった」と振り返る。
新型コロナウイルス流行で休業した頃、節子さんはある客が子どもの勉強支援に取り組んでいることを知り、子ども食堂開設を考え始めた。「どんな子どもにもおいしいご飯を食べて、ほっとできる時間を過ごしてほしかった」
昨秋、半世紀続いた店を閉め、夫婦で節子さんの実家に引っ越した。今秋から勝利さんと始めた食堂は「決して飲食店ではない」が、食材にはこだわっており、以前の常連客も訪ねてきたという。
独居の高齢者にも利用を呼びかけており「温かいご飯を一緒に食べ、気持ちが優しくつながっていく。そのつながりで、元気で生き生きした地域をつくっていければ」と思いを語った。
食堂は土曜午前11時~午後2時。2日前までに要予約。中学生以下無料、大人は「食堂への寄付」として500円。(問)篠崎さん090・7739・8558。