栃木県庁

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 住宅の屋根の工事を巡り、不安をあおって契約を求める悪質な「点検商法」の相談が栃木県内で相次いでいる。今年1月~11月末までに県消費生活センターなどへ寄せられた相談件数は77件で、過去最多だった2021年度の83件に迫るいきおい。相談者の7割を高齢者が占める。新型コロナウイルスが「5類」に移行し、業者の訪問活動が活発になったことが背景にあるという。同センターは「強引な勧誘があっても即決せず、家族などに相談してほしい」と注意を呼びかけている。

 今年5月、県南在住、60代女性が1人で在宅中、突然業者が訪ねてきた。「屋根瓦が落ちそうだ」。点検を行い、350万円の修理の見積書を置いていった。

 高額だったため別居する家族が断ろうとすると、業者は「工事はやめられない」と拒否。修理内容を変更し165万円に減額したが、工事後に雨漏りが生じた。別の業者に点検を依頼すると、全ての修理が165万円でできたと言われた。

 同センターによると、同様の相談が増加している。「近くで工事をしていた」と言って訪問し無料点検を促すケースや、雨どいが壊れているとして「火災保険で修理しないか」と勧誘するなどの例がある。

 屋根の点検商法に絡んだ相談は、統計が残る13年度以降は10件以内で推移。19年度は台風19号の被害に関連し46件に増加。新型コロナウイルス禍の20年度は46件、21年度は37件増の83件と急増し、前年度の過去最多を大幅に更新した。外出自粛により自宅で過ごす時間が増え、高齢者が勧誘されやすい状況だったという。

 今年も増加傾向が続いており、コロナの「5類」移行で、業者の訪問販売が増えたことが影響しているとみている。

 屋根の状態は自分で確認がしづらく、修理が必要かどうか判断が難しい面がある。業者から破損した部分として見せられた写真が、別の家の屋根だったというケースもあった。

 同センターの担当者は「無料でも安易に点検を受けないでほしい」と強調。複数社の見積もりを取ることや、不審に感じたらクーリングオフを検討することを勧める。1人暮らしの高齢者がいる地域では「近所同士で声をかけ日頃から見守ってほしい」としている。