昨年12月下旬、県が開いた災害ボランティアセミナー。数々の災害で支援活動に携わったNPO法人レスキューストックヤードの栗田暢之(くりたのぶゆき)代表理事は、1995年の阪神淡路大震災で、要救助者の8割を地域住民が助け出したことを例に「地域での支え合いが重要」と強調した。
被災者の自立や生活再建を支援する災害ボランティア活動。住宅の片付けや泥のかき出しといった肉体労働のほか、避難所運営や炊き出し、傾聴など多岐にわたる。
県社会福祉協議会によると、地震や水害などは被災地域が広範囲にわたり、全国からボランティアが集まる。その一方で、自治体によって支援にばらつきが生じることもあるという。
県社協の担当者は被災者中心・地元主体・協働の災害支援の三原則を挙げ、「新型コロナウイルス禍でボランティア受け入れを制限した時期もあり、改めて地域主体の支援が注目されている」と説明する。
地域主体の活動を後押しするため、県社協は「ストックヤードネットワークとちぎ」を整備。宇都宮市、鹿沼市、那須塩原市、佐野市、芳賀町の5カ所にコンテナハウスを設置し、スコップやバール、一輪車などを保管。災害が発生した場合、これらの拠点から資機材をいち早く被災地に届けるという。

鹿沼市社協で災害ボランティアなどに携わる斎藤裕嗣(さいとうひろし)さんは、2015年の関東東北豪雨、19年の台風19号の水害を振り返り「地元の災害でも関心が薄い市民もいた」と話す。そこで昨年夏、官民協働型の被災者支援を目指して「災害支援プロジェクトかぬま」を始動させた。
プロジェクトは市や市社協、ボランティアグループ、飲食業組合などが参加。平常時から顔の見える関係性を築くためミーティングを定期的に開き、災害時の役割や専門性を共有している。今後、市民を対象にフォーラムやボランティア講座を開催する予定だ。

近年は災害ボランティアの現場で情報通信技術(ICT)が進んでいる。被災地に向かう前にボランティア登録をしてもらい、被災者情報や活動の進捗(しんちょく)状況をデータで管理するなどしている。県社協の担当者は先行事例を参考に、ICT活用に取り組むとした上で「地域の連携、協働によって支援の質に大きく影響する。災害をきっかけに地域活動に関心を持ってほしい」と話している。