民意と公益が相反したときどうなるのか。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る、県と国との法廷闘争のニュースに触れるたびに感じる疑問だ。軟弱地盤改良工事の設計変更を承認しない県に代わって、国が承認する代執行に踏み切る事態となっている。

 2022年9月、移設に強く反対する玉城(たまき)デニー氏は知事に再選した。県民の意思は明白だ。だが現実はそうは進んでいない。今回の訴訟で争点となった代執行の要件「公益侵害」について、県は民意が公益と主張したのに対して、裁判所は普天間飛行場の危険性除去が公益とした。

 沖縄県民の選択は全国民に向けられた訴えであるようにも感じる。在日米軍の基地負担は沖縄に偏っている。デリケートかつ難しい問題ではあるが、日本の安全保障に関わる以上、私たちも関心を高める必要がある。加えて、民意と公益が相反した場合「代執行は全ての都道府県に起こり得る」(玉城知事)ことも、胸に刻んでおきたい。