大学受験に向け、岩手県内の高校では通常授業に加えた「課外」が行われている。県内の高校3年生から岩手日報社の特命取材班に「課外が多く、自主学習をする時間がない」との声が寄せられた。県内の高校に取材すると、希望制導入や時間短縮など見直しが見られた。一方、習熟度別の実施は人員不足や働き方の面から厳しいとの見方もあり、複雑な事情がうかがえた。
課外は授業時間外に行う講習。朝や放課後、土曜、長期休業に実施する。地方の高校生は都会のように予備校や塾通いが難しく、進学を後押ししようと長年行われてきた。県教委によると教育課程外の位置付けとなるため、各校がそれぞれ独自に方針を立てる。
生徒が通う学校は、毎日放課後や土曜に課外がある。出席を求められるため「課外の内容が合わず、もっと難しい問題を解きたいので家で受験勉強したい。せめて難易度別のクラスに分けて」と訴える。
廃止の学校も
県高校教育研究会進路指導部会大学進学懇談会に所属する全16校に取材したところ、放課後課外を行うのは15校。盛岡四高は、入試様式の多様化などを受け、本年度から廃止した。久慈高は教員の働き方改革で、課外の時間を45分に半減。他にも時間や回数を縮小した学校が目立った。
盛岡一高(高橋一佳校長、生徒842人)は2021年度、3年生の課外を希望制とした。6月から放課後に50分、複数の講座を用意。受講は生徒が教科や難易度で判断し、全く受けない人もいる。
主体的に判断し行動できる生徒を育むという狙いから変更した。堀切航介さんは「弱点を考え、自分で選んで受けるのはモチベーションが上がる」と充実感をにじませ、和田健利副校長は「自主的に学習を進め、自ら夢をかなえる努力をしてほしい」と語る。
習熟度分けは少なく
一方、基本的に出席とする学校は多く、習熟度別のクラス分けは少なかった。生徒が望む課外の自由化や個別クラスには、対応しきれない事情もあるようだ。
進学校に在籍経験のある40代男性教諭は「成績上位層を伸ばしたいが、ボトムアップで手いっぱい。習熟度別のクラス分けには教員が足りない」と悩みつつ「働き方改革に逆行する部分もあるが、何とか大学に行かせたい思いでやっている」と胸の内を語る。
課外の見直しは全国的な流れという。名古屋大大学院の内田良教授(47)=教育社会学=は「課外は教育制度上で定まった位置付けがなく、あいまいな状態で行われている。誰かが我慢を強いられる状況は良くない。参加は自由化すべき」と指摘し「教員の負担を減らすため塾など外部の協力を仰ぐ方法もある」と提案する。(岩手日報)