トライアスロンでパリ五輪代表選考が佳境を迎えている。「五輪出場資格ランキング」の男子で資格獲得の前提となる140位以内に日本人は9日時点で7人おり、2021年東京五輪代表のニナー賢治(けんじ)(宇都宮市、NTT東日本・NTT西日本)が最上位の15位につけている。日本トライアスロン連合は今月27日時点で20位以内の日本人最上位選手を代表に決定するとしており、11日に横浜市で開幕する世界シリーズ横浜大会の結果次第で2大会連続の五輪が大きく近づく。
世界シリーズは年間6~7大会開かれ、世界のトップ選手が集う。ニナーは昨年、6大会に出場し3大会で10位前後などと健闘し、横浜大会も11位に入った。
東京五輪は金メダルのクリスティアン・ブルンメンフェルト(ノルウェー)と1分20秒差の14位。世界との差を埋めパリ五輪でメダルを目指すため、この3年間で重点的に強化してきたのはランだ。
ラン(10キロ)はスイム1・5キロ、バイク40キロを終えた後にスタートするため、いかに消耗を少なく走れるかが焦点。東京五輪後に専属コーチに就いた村上晃史(むらかみこうじ)さん=茂木町在住=も「そこが賢治にとっての東京までの壁で、パリまでに克服すべき課題」と見抜いていた。
その後はフォームを一から見直しメダリストらの走りを分析。上半身と下半身を連動させ肩や股関節の可動域を広げることで、柔軟性があり疲労感の少ない走りを磨いてきた。
走りのイメージを崩すリスクもあり「自分にとっては大きなプロジェクトだった」とニナー。段階的に改善、調整を繰り返して得た現在の走りは「間違いなくステップアップした」と手応えを口にする。
4月のアジア選手権(広島県廿日市市)ではスイムで先行し、4人の集団でバイクを終えるとランで一気に加速して他を突き放した。序盤で先行できるのはニナーの大きな強みだ。
一方、世界シリーズともなれば先行逃げ切りは現実的でない。バイクで大集団が形成され、40人ほどでランに入る展開も珍しくないが、村上さんは「ワールドクラスの走りができるようになってきているので、どういう状況でも楽しみ」と期待を込める。
今季の世界シリーズ初戦となる横浜大会はブルンメンフェルトら実力者が出場予定で、ニナーは「自分がどれだけできるか確かめるいい機会になる」と見据える。成長を示し五輪へ弾みをつけたい。