「足尾に緑を育てる会」の担当者から説明を受けるトイランベ事務次官(右)ら

 【日光】来日中のアフリカ中部コンゴ民主共和国の政府高官10人が18日、足尾銅山跡や植樹活動の現場を視察した。国際協力機構(JICA)が実施する研修の一環で、足尾銅山開発の歩みと環境悪化、その後の緑化復旧への取り組みといった歴史を学び、鉱山大国である同国の環境問題改善につなげることが目的。環境・持続可能開発省のベンジャミン・トイランベ事務次官は「取り組みに生かしたい」などと語った。

 林野庁から同国へ政策アドバイザーとして派遣中で、今回の研修を案内した大仲幸作(おおなかこうさく)JICA専門家によると、同国は電気自動車のバッテリーや太陽光・風力発電設備に欠かせない、コバルト(世界1位)、銅(同3位)の世界有数の産出国。広大な熱帯雨林も有し、気候変動や脱炭素に向けて国際的に重要な役割を求められている。ただ、近年は急激な産出量増加に伴い、鉱山周辺で環境問題も生じているという。

 一行は18日午前に足尾銅山跡(足尾銅山観光)を視察後、午後にNPO法人「足尾に緑を育てる会」を訪問。煙害で荒れた山で同会が取り組んできた緑化・植樹活動の歴史や現状について担当者の説明に熱心に聞き入り、現場も視察した。

 研修を終え、トイランベ事務次官は「帰国後の私たちの取り組みに生かしたい」とした上で「緑化の成果はもちろん、同会の活動の精神、意義に大変感銘を受けた」と振り返った。

 同会の斉藤敦(さいとうあつし)事務局長は「コンゴの方々に感動していただき、こちらも感謝している。これからの励みにして活動したい」と話した。