「私の構想は破綻した」
21日夜、宇都宮市内で開かれた記者会見。知事選6選出馬を正式に表明した福田富一(ふくだとみかず)知事(71)は、自身の後継構想も口にした。言葉や表情に無念さがにじんだ。
自民党高橋克法(たかはしかつのり)参院議員(66)。元高根沢町長で参院2期目を務める高橋氏を、福田氏は後継者と目してきた。
2人は共に元総務庁長官の故岩崎純三(いわさきじゅんぞう)氏を政治の師と仰ぐ。福田氏は5期目の知事任期残り1年を控える2023年秋ごろから、40年来の盟友の高橋氏を次の知事に、空いた参院の候補に自民県議を充てる方向で調整するよう県連幹部に求めていた。
だが、自民関係者の反発は少なくなかった。「知事の激務が務まるのか」「仮に当選できても短期政権になる」。高橋氏の病歴や年齢に触れて懐疑的な声が飛び交い、経済界や首長にも賛同が広がらなかったとされる。
自民重鎮は「福田氏から見た後輩としての(高橋氏の)姿と、第三者から見た姿にはギャップがあったんだろう」と推し量る。福田氏は3月までに、構想を諦め、打診していた高橋氏にわびたという。
「後継は高橋氏一択」と周囲に語っていた福田氏。他の候補は念頭に置かず、結局は周囲に続投を請われ出馬を決断する姿は4年前と重なって映る。
福田氏が仮に6選を果たせば、県政史上最多だった知事当選回数をさらに更新することになる。全国を見れば22年以降、4期以上だった石川と徳島、奈良の各県知事は自民系の対抗馬の立候補で引退や落選に追い込まれた。背景に地元国会議員や首長らとの確執もあったとされる。
対して福田氏は「敵をつくらないタイプ」と評され、自民の国会議員や県議、首長、本県を代表する企業関係者とも良好な関係を築く。派閥の裏金事件で大逆風にさらされる自民側には、引き続き福田氏の後ろ盾になるのが得策との打算も見え隠れする。
失政らしい失政はなく、多方面に配慮を欠かさない調整型の政治家ともされる福田氏。野党にとっても「攻めづらい」(立憲民主党県連幹部)のが実情だ。立民県連と共産党県委員会はそれぞれ独自候補の擁立を目指しているが、現時点で具体的な候補は挙がっていない。
「福田1強」が、与野党とも新たな候補を擁立しにくい状況を生んでいる。