まんまるの顔に、いつもニコニコ笑顔-。栃木県の公式マスコットキャラクター「とちまるくん」が6月15日、県元気ニコニコ室長から「県元気ニコニコ部長」に昇任した。誕生から15年。県民にも浸透し、観光イベントのステージや商品パッケージのデザインなど、至るところで目にするようになった。これまでの“功績”が認められ、晴れて部長となったとちまるくんの知られざる経歴や、仕事ぶりに迫った。

6月15日の県民の日に、とちまるくんに交付された辞令。「栃木県元気ニコニコ部長(通称:GNO)に任命する」と書かれている=県庁
6月15日の県民の日に、とちまるくんに交付された辞令。「栃木県元気ニコニコ部長(通称:GNO)に任命する」と書かれている=県庁

 公式プロフィルによると、とちまるくんは11月11日生まれの男の子で、デビュー15年でも“永遠の7歳”。栃木弁ではなく、語尾に「まる」などを付ける「とちまるくん言葉」で話す。

 生まれた場所は、県庁から南に延びる県道沿いの街路樹のうち、県庁に最も近い場所にあるトチノキ。動画投稿サイトのYouTubeで2015年に公開された動画「The Roots-とちまるくんの軌跡-」では、街路樹を見上げて「このトチノキからぼくは生まれたまる」と郷愁にふける姿が見られる。

とちまるくんが「生まれた場所」とされる県庁前のトチノキ=宇都宮市本町
とちまるくんが「生まれた場所」とされる県庁前のトチノキ=宇都宮市本町

 普段の仕事ぶりはどうなのか。とちまるくんの“同僚”に当たる県地域振興課の担当者に話を聞いた。

 とちまるくんの主な業務は、休日のイベント出演。県の催しを中心に県民やファンと触れ合い、運が良ければ「キレキレの『とちまるくん体操』を披露してくれる」。複数のイベントを掛け持ちする多忙な日もあるが、とちまるくんには「3T(とちまるくんテレポーテーション)」と呼ばれる特技があるんだとか。

 もう一つの大事な業務は、土産品のパッケージなどに登場し、栃木県の「顔」として地域の魅力をPRすること。さまざまな職業の衣装を着て、スポーツにも挑戦するとちまるくん。バリエーション豊かなイラストは、約900種類に上るという。基本的には笑顔を絶やさないが、泣いたり怒ったりする姿もある。口をムッと結んだ珍しい表情は、立ち入り禁止を呼びかける掲示物などで見られるそうだ。

県庁2階の売店で販売されているとちまるくんグッズ
県庁2階の売店で販売されているとちまるくんグッズ

 グッズも幅広い。県庁2階の売店や県アンテナショップ「おいでよ! とちぎ館」(宇都宮市本町)では、とちまるくんがデザインされたポロシャツやエコバッグなどを購入できる。ちなみにとちぎ館の売れ筋は、ぬいぐるみ。ストラップなど持ち歩きやすい商品も子どもに人気なほか、定期的に缶バッジを買いに来る70代の“とちまるくん推し”もいるという。

 販売されているグッズの大半は、事業者が県にとちまるくん使用を申請し、商品化されている。昇任後、「ゴルフのヘッドカバーにならないかな」などと、さらなる商品展開を期待する声も聞こえてきた。

県アンテナショップ「おいでよ!とちぎ館」で販売されているとちまるくんグッズ=宇都宮市本町
県アンテナショップ「おいでよ!とちぎ館」で販売されているとちまるくんグッズ=宇都宮市本町

 人気は県内にとどまらない。とちまるくんの公式X(旧ツイッター)のフォロワー数は、1万6千人超。年賀状は例年300枚に達する。国内はもとより、海外からも届くそうだ。

 栃木県のPR活動に献身し、地道に、確実にキャリアを重ねてきたとちまるくん。今回の昇任でついに、全国的にも絶大な知名度を誇る熊本県の「くまモン」や、ゆるキャラグランプリ2014で優勝した群馬県の「ぐんまちゃん」と役職で肩を並べた。

 営業部長兼しあわせ部長のくまモンは、関連商品の売り上げが1664億円(2023年)と過去最高の経済効果をもたらした。宣伝部長のぐんまちゃんはアニメ化して全国の子どもたちにも存在感を示している。

 とちまるくんも「部長として、新たな取り組みを考え中」(担当者)だといい、さらなる活躍を期待したい。とちまるくんのスケジュールは、公式ホームページで確認できる。

県庁1階ロビーで来庁者を出迎えるとちまるくん
県庁1階ロビーで来庁者を出迎えるとちまるくん