豊かな自然の中に建つ富弘美術館

温かな詩と美しい草花の作品が並ぶ館内

美術館からも一望できる草木湖

豊かな自然の中に建つ富弘美術館 温かな詩と美しい草花の作品が並ぶ館内 美術館からも一望できる草木湖

 渡良瀬川上流の草木湖のほとりに、道の駅に登録された美術館がある。日光宇都宮道路の清滝インターチェンジを降り、車で約40分。国道122号で足尾を走り抜けると、緑豊かな景色の中に「富弘(とみひろ)美術館」が現れた。

 群馬県勢多郡東村(現みどり市)出身で、4月に78歳で死去した詩画作家の星野(ほしの)富弘さんは、中学校教諭だった24歳の時、クラブ活動の指導中に頸髄(けいずい)を損傷。手足の自由を失った。入院中に筆を口にくわえて絵や文字を描き始め、花や草木を題材にした多くの作品を残した。

 古里に建てられた美術館は、シャボン玉をイメージした大小33の丸い部屋で構成される。まずは果物をテーマに、9月1日まで開催中の特別展「いのちのゆりかご」へ。桃やイチゴ、ザクロ…。鮮やな水彩に目を引かれる。

 「喰(く)われてもよし つぶされてもよし 干されてもよし 一番甘くなって枯れよう」

 「ぶどう」という作品には、こんな詩が添えられている。学芸員の相崎(あいざき)ちひろさん(37)は「優しくユーモアのある方だった。その人柄の通りお説教ではなく、見て感じたことを飾らず書いた。見る人の心の状況によって印象が変わるのも魅力です」と説明する。

 春夏秋冬に合わせた作品もあり、この時季は夏の草花作品を楽しめる。追悼として幼少期からの写真や、最後の詩画作品「生かされて」も展示されている。

 約70点を鑑賞し、美しい絵と温かな言葉に心を洗われた後は、湖を見渡せるカフェで一息つくのもいい。

 「生きる強さを教えていただき、ありがとう」「勇気をもらった」。エントランス近くに置かれたノートには、来館者からの感謝がつづられていた。外に出て前庭や散策路を歩く。星野さんの愛した木々の緑や花々が、いっそう輝いて見えた。

 【メモ】群馬県みどり市東町草木86。午前9時~午後5時(最終入館は午後4時半)。4~11月は無休。12~3月は月曜休館。その他、展示替えに伴う臨時休館日がある。入館料は大人520円、小中学生310円。(問)0277・95・6333。