義務教育を十分に受けられなかった人たちが学ぶ「夜間中学」のあるべき姿などを考えるシンポジウムが15日、宇都宮市内で開かれた。不登校を経験した元生徒は、夜間中学を「人との関わり方を学んだ場所」とし、海外出身の女性は「進学の夢を後押ししてくれた場所」と重要性を訴えた。2026年度には県内初の公立夜間中学の開校が予定されており、参加者は「個々の生徒に応じた柔軟できめ細かな支援をしてほしい」などと期待を込めた。
シンポジウムは「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」などが主催し、約100人が参加した。
初めに生徒の立場で2人が登壇。東京都内の公立夜間中学を卒業した秋元伸一(あきもとしんいち)さん(38)は、小中学校で不登校を経験した。他人と話せない状況だったが、夜間中学では個別に声を出す練習をするなど、徐々に周囲と打ち解けたという。「全てが将来に必要なことだったと思う」と語った。
民間主体の「とちぎ自主夜間中学宇都宮校」に通う宇都宮工業高の定時制課程3年(村山むらやま)エマリンさん(32)は、涙をこらえながら十分に学べなかった過去を振り返った。祖国のフィリピンでは、家計を助けるために小学生の時からメイドとして働いたといい、「日本で高校に進学できたのは自主夜間中学のおかげ」と感謝した。
2児の母でもある村山さんは「いっぱいいっぱいだった時、『急がなくて大丈夫ですよ』という言葉で気が楽になった」と話した。
札幌市内で1990年から続く自主夜間中学「札幌遠友塾」の元代表工藤慶一(くどうけいいち)さんは「学びの主役は生徒。生徒の実情に合わせ、常に変化し続ける学校であるべきだ」と強調した。自主夜間中学と公立夜間中学の連携の大切さも訴えた。
登壇者からは他に、「オンラインの活用など、県内全域の学びのニーズに応える工夫を」「県外在住者の受け入れも検討してほしい」といった意見が出た。