神山養鱒場が水を取り入れている沢。せき止めていた石垣が崩れ、手前の管から取水できなくなった=27日午後、鹿沼市上粕尾

 県内各地で豪雨が相次ぎ台風10号が接近する中、「川」をなりわいの場とする養魚場や管理釣り場業者が大雨被害に戦々恐々としている。25日夜から翌26日未明にかけての大雨では、川の増水や濁水への対応に追われ、一部では設備の故障や魚が酸欠死するケースもあった。「これ以上雨が降ったらどうなるのか」。関係者からは憂慮する声が漏れた。

 ニジマスを中心に養殖する鹿沼市上粕尾の「神山養鱒場(ようそんじょう)」。25日夜からの豪雨で、取水のため川をせき止めていた3カ所の石垣が崩れる被害に遭った。

 一部は増水時に自然と崩れるように30~50キロの石を組んでいるが、今回は最大500キロの石が崩れた。先代社長の神山昭(かみやまあきら)さん(77)は「前身の養殖場の頃を含め50年で初めて」と話す。魚の被害はなかったが、修復のめどは立っていない。

 台風10号は本州を縦断する可能性もある。神山さんは「油断はできない」と危機感をあらわにした。

 「あんなに大雨が降ったのに、また台風が来るなんて」。大田原市乙連沢(おとれざわ)の管理釣り場「アングラーズパーク キングフィッシャー」を営む手塚史規(てづかふみのり)さん(30)は不安を口にする。

 25日深夜。水位上昇を知らせるスマートフォンの警報音で目を覚ました。釣り場に駆け付けると、五つの池のうち二つがあふれていた。大雨時は注水口にごみがたまり水の循環ができず、魚が酸欠死するリスクがある。雨風の中、排水とごみを取り除く作業を1人で朝まで続けた。幸い約3万匹の魚に被害はなかった。

 釣り場は元養魚場。1998年の那須水害ではほとんどの魚が流され、約6千万円の被害があったと祖父から聞いた。「これ以上の雨は不安で仕方ない」

 県によると、25日夜からの大雨で、県内養魚場では大量の幼魚が酸欠死した被害もあったという。

 県ブランド魚「プレミアムヤシオマス」の養殖の拠点で、食事や釣りも楽しめる矢板市下伊佐野の「金精川のます池」。普段は魚影が見えるほど澄んでいる池も大雨後は茶色く濁る。生育環境が悪化すると、病気発生のリスクが高まる。

 運営する金精川漁業生産組合の羽室勇治(はむろゆうじ)理事は連日、清掃作業などに汗を流す。「自然の恵みを受ける一方、自然がある故の苦労もある」と身にしみている。「魚を死なせないために水の管理に付きっきりだ」と話した。