【宇都宮】江曽島4丁目自治会は、独自のアイデアで無料通信アプリLINE(ライン)の公式アカウントを活用した配信型のデジタル回覧板に取り組んでいる。企業や店舗向けのビジネスアカウントを応用し、登録している住民のスマートフォンに一斉配信するため、時間や手間をかけずに情報が届く。同自治会の山口和昭(やまぐちかずあき)会長(73)は「連絡がスムーズになった。対象が世帯から個人になり、自治会未加入世帯への配信も可能になった」と効果を実感する。
回覧板は自治会や行政などからの案内を、自治会加入世帯にリレー方式で回すのが一般的だ。回り切るまでに時間がかかることや、未加入世帯には届かないことなどが課題だ。通常は班長が自分の班の回覧板を管理するため、山口会長は「年に何十回と案内が来る。大変だからと、高齢を理由に自治会を退会する人も増えている」と明かす。
負担を減らそうと同自治会は新型コロナウイルス禍の2020年、ライン公式アカウントに注目。企業が消費者にPR情報を発信するように、回覧板の情報を住民に直接配信できるようにした。住民同士で「友だち登録」する必要はなく、自治会アカウントを登録するだけで情報が届く手軽さがある。
自治会や行政からの案内をテキストなどで送るほか、活動報告には写真を添えて送信。出欠確認は申し込みフォームを使い、住民からの問い合わせはチャットで受け付ける。1月の能登半島地震を受けて義援金などを呼びかけた時は、すぐに集まったという。
公式アカウントの活用は無料版で試行的に開始。用紙代や印刷代を減らせる効果があったため、今は月5千通まで送れる月額5500円のサービスを利用している。紙の回覧板も併用しているが、本年度で廃止する予定だ。
ただ、デジタル回覧板はスマホが使えることが前提となる。山口会長は「高齢者向けのスマホ教室を定期的に開き、使い方を説明していく」と話す。