任期満了に伴う宇都宮市長選はあす10日告示され、7日間の選挙戦に突入する。6選を目指す無所属現職の佐藤栄一(さとうえいいち)氏(63)=自民、公明推薦=に、いずれも無所属新人で元茨城県つくば市副市長の毛塚幹人(けづかみきと)(33)、市民団体代表の上田憲一(うえだけんいち)(87)、公益財団法人理事長の荒木大樹(あらきだいじゅ)(53)の3氏が挑む構図となりそうだ。
50万都市の中核市でも人口減少局面に入っており、超少子高齢社会への対応は一段と重要性が増している。県都でどのようなまちづくりを行い、彩り豊かな未来図を描くのか。各候補者には実りある論戦を期待したい。
佐藤氏は6期となれば市政史上最多となる。全国初の新設次世代型路面電車(LRT)など多くの実績を重ね、自ら「常におごらないよう戒めている」と語る。とはいえ、長期政権への批判は避けられないだろう。任期を巡り毛塚氏は「最大でも3期」、荒木氏は「2期8年まで」と公約に多選自粛を掲げ、上田氏も「3期まで」と指摘する。
多選の是非は明確に争点化されていないものの、5期20年に及ぶ佐藤市政をどう評価するのか。有権者は判断を問われることになる。
さらに論点として急浮上したのが、LRTのJR宇都宮駅西側延伸とそれに関するまちづくりだ。
佐藤氏は引き続き、LRTを含む公共交通の充実を掲げ、沿線の活性化策を訴える。毛塚氏もLRTを推進する立場ながら、県が進める「文化と知」の創造拠点の沿線への誘致を強調。一方、上田氏はLRT延伸の白紙撤回、荒木氏は住民投票で延伸の是非を問うべきだと主張している。
LRTを延伸する場合、駅西側だけでなく市全域でどのようなまちづくりを展開するのか。延伸しないのならば、公共交通をどう充実していくのか。4氏は財政状況なども踏まえた実現可能な政策を有権者に示すべきだ。
前回の市長選投票率は41・07%。先の衆院選で市を含む1区の投票率は48・50%で、前回を3・7ポイント下回った。選挙疲れから、市長選の投票率が低下する懸念もある。
市や町など基礎自治体の首長選は、住民にとって身近な選挙で、暮らしに直結する市政運営を誰に託すのかを選択する貴重な機会である。有権者は候補者の訴えをしっかり吟味した上で、次のリーダーへの1票を投じたい。