第1詩集「浄闇の華」を手にする吹木さん

 【宇都宮】県現代詩人会などの会員で鶴田町、元中学教諭吹木文音(ふぶきあやね)(本名中島宏美(なかじまひろみ))さん(54)が、第1詩集「浄闇(じょうあん)の華」を自費出版した。花や家族をモチーフに心象風景をつづったほか、戦後80年を迎える中で大戦の戦禍に言及。戦争に翻弄(ほんろう)され、一人娘だった吹木さんの母親(78)を残し若くして病死した祖父母の姿も描く。

 会員でもある日本詩人クラブの会合で昨年、自身の詩を朗読したところ版元の目に留まり出版につながった。幼い頃から本好きだった吹木さん。中学2年まで3年間暮らした福島県喜多方市で、国語教諭の担任から書くことや古典文学の面白さを教わった。詩人でもあった担任は詩集などを貸してくれたそうで、ここが自身の詩の原点という。

 前半には、「タチアオイ」「桜」「百日紅」など花がモチーフの作品を主に収録。万葉集で男女の恋愛歌を指す「相聞」のタイトルを冠した後半で、祖父母を描いた。親族に聞いた話を基に2人の姿を作品に落とし込んだ。最後に収めた「たとえば」では、亡くなった2人が命に対する思いを交わす穏やかな会話をイメージした。作品の間に「語り」を挟み、彼らの歩みを解説的に記す試みも。

 吹木さんは「私の命に連なる人々の思いを結晶できたのでは」と話す。

 全28編の収録作はほぼ全て推敲(すいこう)し直したという。文化企画アオサギ刊。A5判、127ページ。2200円。残りわずかだがネット通販大手アマゾンで購入可能。寄贈先の県立図書館、宇都宮市図書館でも読める。