採れたてのナシに魅了され、サラリーマンから転身

 佐野市の南西部を南北に走る「佐野フルーツライン(※1)」は、毎年6月下旬から11月中旬ごろまでナシやモモの直売所が立ちならび、県内外から新鮮な果物を買い求める人で賑わいます。2015年にこの地で「いずみファーム」を立ち上げた猪股和泉さんは、群馬県太田市出身で、ITなどの職業訓練やキャリアコンサルを行う会社で働くサラリーマンからの就農という異色の経歴の持ち主。丹精込めて栽培したナシ「にっこり」の収穫が最終盤を迎えています。

 現在、約65アールの面積でナシを栽培。8月上旬からの「幸水」に始まり、「豊水」「あきづき」「きらり」、そして11月上旬まで収穫される「にっこり」でシーズンを終えます。今年は生育もよく、おいしいナシに仕上がったといいます。

 「経験も人脈、資金もない状態で、ゼロからの就農でしたが多くの人に支えてもらいました」と振り返ります。果樹園で食べたナシのおいしさに衝撃をうけ、就農を決意。自ら情報を収集し、安足農業振興事務所などに相談。JA佐野の果樹部会などを通じて、そこで師と仰ぐ農業士と出会いました。1年間の研修で果樹栽培のいろはから経営手法を学び、手づくりでいずみファームを立ち上げました。

おいしいナシにこだわり、農業のイメージを変えていきたい

 猪股さんのナシ栽培は、完熟堆肥による土づくりや下草を残し刈り込む草生栽培(※2)、丁寧な受粉の作業と徹底した摘蕾(てきらい)・摘果、そして樹上完熟採り(※3)と、試行錯誤を繰り返しながら毎年進化しています。なかでも常に意識しているのは「頻繁に畑に足を運び、ささいな変化も見過ごさないこと」だといいます。

 2年ほど前から長女が手伝ってくれるようになり、ようやく軌道にのってきたといいます。「農業というと『キツい』『休みがない』『儲からない』というイメージを持たれている方もいらっしゃいますが、おいしいナシを作れば自然と農業の楽しさや思いがお客さまに伝わる。そんなナシ栽培で認めてもらえる存在になりたいです」と抱負を語ってくれました。

 

 猪股さんのナシは、いずみファームの直売所(営業日など詳しくはHPを。「いずみファーム」で検索)と同直売所のオンラインショップなどで購入が可能です。「にっこりは大きくて食べきれない」という方もいますが、日持ちする品種なので、半分に切ってラップに包み、冷蔵庫に入れておけば大丈夫とアドバイスしてくれました。

 猪股さんが栽培した樹上完熟採りのみずみずしく甘いにっこりは、食べる人を笑顔にしてくれそうです。 ※天候などにより予定より早く販売終了する場合もありますので、予めご了承ください。

 記事に関するお問い合わせは、JA佐野 園芸課(☎0283・23・9992)。

雑学辞典

【佐野フルーツライン】(※1)  栃木県佐野市の南西部、吾妻地区でナシやモモの果樹園や直売所20軒ほどが立ちならぶ通り。東北道佐野・藤岡インターから車で15分ほど、「佐野観光農園アグリタウン」も近くにあります。

【草生栽培】(※2) 樹園地管理の方法の一種で、あえて下草を残し適切に刈り込み土壌表面を草で覆うことで、有機物の補給や微生物を増加させ、土壌の流出や硬化を防ぐなどの効果が期待できます。

【樹上完熟採り】(※3) 樹上でしっかりと熟度を見極めることで、最もおいしいタイミングで提供することができます。